マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REITの価格は、11月前半のやや弱含みでの展開から中旬以降に再度上昇局面に転じています。東証REIT指数は12月3日に年初来高値を更新し、1,068.89ポイントを付けました。11月は需給面の悪化要因となる(1)日銀は10月に140億円のREITの買取りをおこないましたが、11月には買取りを実施していない、(2)11月28日に大和ハウスリート投資法人(証券コード3263、以下DHI)が新規上場し514億円の調達を行った、という二点があったことを考慮すると堅調に推移していると言えるでしょう。
またDHIの上場日価格、公募価格50万円を超える水準で推移しました。2012年の新規上場として3銘柄目となったDHIは、上場初日から公募価格以上で推移した最初の銘柄となりました。12月21日に上場予定の物流施設に特化して投資するGLP投資法人(証券コード3281)にとっても追風になりそうです。
さて今回は、来年以降導入が予定されている制度改正のうち「海外不動産投資の制限緩和」について記載していきます。「海外不動産の投資制限の緩和」とは、具体的には海外で不動産投資のためだけに設立した会社(以下、SPC)の株式を50%以上保有できるようにするというものです。
J-REITの海外不動産投資は、2007年5月に制度としては解禁されていました。しかしJ-REITは原則として他社株式の50%以上を取得できないという制限が残っているため、実質的には、海外不動産に投資できないという状況です。その最大の理由はJ-REIT自らが海外の不動産を保有した場合、現地での課税リスクが残るためです。通常の事業会社の場合は、海外で課税された税額を国内での法人税等から控除できるため、あまり問題になりません。しかしJ-REITは、投資家に分配することで法人税等が生じない仕組みですので、海外の課税分の控除ができないのです。この点を回避するために現地での課税を回避できるSPCを設立し、J-REITがSPCに投資することを可能にすることで事実上不動産を取得することが可能となるのです。
海外不動産投資の最大のメリットは、投資先の選択肢が増え資産規模の成長に繋がることです。J-REITは長期的に不動産を保有し、その賃貸収益を投資家に配分する仕組みです。また投資家側から見ても長期的に保有する投資商品としての役割がJ-REITに期待されています。しかし日本は今後人口減少が避けられず、現在の不動産の取引利回りでは投資地域や用途に一定の限度がかかることになります。そこで先進国や今後経済成長が見込める新興国の不動産を取得することは、J-REIT及び投資家双方にメリットとなると考えられます。
ただし、この制度改正は長期的にみればメリットになるものと捉えるべきでしょう。その理由としてJ-REITは「内需株」として評価されてことが挙げられます。図表は2012年のJ-REITとTOPIXの値動きを示したものですが8月以降、乱高下を繰り返すTOPIXに対してJ-REITは堅調に推移しています。TOPIXの乱高下要因は、領土問題に伴う中国市場での企業収益低迷や円台による海外収益低下などが背景にあると考えられます。一方で海外不動産投資を行っていないJ-REITは、内需株としての側面が投資家に評価されていると考えられるのです。
またこの制度改正の動きが明らかになって以降、筆者が既存上場銘柄にヒアリングしている中では海外不動産投資に否定的な銘柄が大半でした。為替リスクの存在や現地で運営リスクの懸念がその理由となっていました。従って制度としての解禁は行われても、当面その影響は限定的になりそうです。
なお次回連載では、来年度導入予定の制度改正のうち今回掲載予定でした「投資主割当増資」についてメリットと課題を記載する予定です。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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