マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。ETFが米国において飛躍のきっかけを掴んだのは、実は2000年代に入ってからでした。大きな要因として、金融商品の流通経路の革新が挙げられます。具体的には、投資アドバイザー(インベストメントアドバイザー)経由の商品購入という、新たな流れが生まれたのです。オンライン証券の普及によって、金融商品の売り手と消費者の関係は劇的に変化しました。消費者は自分のペースで、ダイレクトに金融商品を取捨選択できるようになったのです。しかし同時に、金融商品を選び切れない消費者を発生させることにもなりました。多様な金融商品群と、消費者の潜在ニーズを結びつける役割を担ったのが、投資アドバイザーです。米国では投資アドバイザーが州に登録をし、投資助言業務、投資一任業務などを行っています。消費者はこの投資アドバイザーを通じて金融商品を購入し、また、ポートフォリオ構築のアドバイスを受けることになります。当初、金融機関に属さないアドバイザーは、金融機関の営業マンに代わって、消費者に金融商品を販売し、そこから手数料(コミッション)を得ていました。しかし、そこには「利益相反」の問題が横たわります。アドバイザーが消費者の利益よりも、自らの利益(コミッション収入)を優先させる恐れがあるためです。
米国における投資アドバイザーを狭義に定義すれば、消費者にポートフォリオ構築のアドバイスを行い、付加価値提供によって顧客から直接手数料(フィー)を受け取る人、となります。この点が、ビジネスモデル上のコミッションとフィーの本質的な違いなのです。米国のフィナンシャルアドバイザー業界ではこの10余年、コミッションからフィーへの流れが顕著になっています(もちろん、この流れを加速させたのは、賢明な消費者の意思表示です)。米国の投資アドバイザーは通常、顧客の資産残高に応じて、自らの報酬(フィー)を設定します。この場合、顧客の資産が増えることが、アドバイザーの報酬が増すことを意味するため、消費者とアドバイザーの間に「利益相反」が起こりにくいのです(これが米国における「フィービジネス」の勃興です)。
預かり資産に応じて直接フィーを請求するアドバイザーは、どうすれば顧客の資産が長期的に増えるかに注力することとなります。その結果、短期の売買は勧めず、顧客にとってリスク分散効果が高く、コストが低廉なETFを推奨するようになったわけです。ETFでポートフォリオを組めば、リスクコントロールがしやすく、また、継続コストが低いため、その分実質リターンが高くなります(これは消費者、アドバイザー双方にとって利益となりますね)。このように、米国におけるETFの普及は、アドバイザーのビジネスモデルの変遷と大いに関係しているのです。これらの点を鑑みると、日本でETFが普及するカギは2点あることが分かります。ひとつは、銀行、証券会社の営業マンの評価形態を、手数料収入から預かり資産残高ベースに移行させることです。もうひとつは、ファイナンシャルプランナーをはじめとした、独立系アドバイザーの普及を法令等で後押しすることでしょう。最終的には進化を続ける消費者が、既存のビジネスモデルの変遷を促すことになると筆者は考えます。
コラム執筆:カン・チュンド
晋陽FPオフィス代表 http://www.sinyo-fp.com/
2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。
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