マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
11月18・19日にシンガポールで開催された国際会議にパネリストとして参加してきました。アセットマネージャーたちの多くが、日米の株価を割高と評価していました。アベノミクスや新三本の矢に対する評価はかなり低く、米国株についても利上げが控えていることもあり、上値余地が小さいとみているようです。
さて前回の本欄(11月6日)では、「米国株の一時的な調整リスクに注意」としました。その翌週から米国株は調整に入り、ダウ平均株価は3日の高値1万7977ドルから16日の安値まで767ドルも下落しました。10月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想をはるかに上回る27万1000人となり、米利上げが確実視され始めたことが下落につながったとの指摘もあるようですが、「今年の米国株の値動きは2011年に似ている」と指摘した通り、ある程度は想定された下げだったと考えられます。ただし、ダウ平均株価は100日移動平均線が位置する1万7200ドルで下げ止まり、パリで起きた同時多発テロの影響もいまのところ限定的です。米利上げは12月のFOMCで決定される見込みですが、直近3回の利上げ局面では米国株は利上げ開始まで堅調に推移しています。そのため、FOMCまで米国株は底固く推移しそうです。
しかし、利上げ後の動きには要注意です。利上げの3カ月後にS&P500は10%程度下落しています。12月に利上げが決定されるとすれば、来年3月ごろまで調整局面が続きそうです。ただし、下値を固めると反発すると考えられます。その場合には、高値は5月ではなく、もう少し先になるかもしれません。
米国の大統領選挙と米国株の関係も気になります。大統領選挙の前年、つまり、現職の大統領の3年目は上昇しやすい傾向があります。オバマ大統領の最初の任期の3年目のS&P500はわずかにマイナスでした。また今回も、いまのところマイナスで推移しています。このアノマリーは、共和党政権では100%上昇となりますが、民主党政権では83.3%にとどまっています。したがって、今年の米国株が必ず上昇するわけではありません。また米感謝祭前日に米国株に投資をし、1月3日に売却すれば、過去33年間はすべての年で利益が出ているとの統計があるようです。しかし、今年は利上げが控えています。過去の利上げ後は下げる傾向がありますので、利上げまでの上昇局面では手仕舞い売りを進め、利上げ後の安値拾いのための資金確保を進めたいところです。
原油相場の動きにも要注意です。米国株の原油相場は相関が高くなっています。今年の原油価格の安値は8月につけましたが、WTIおよびブレント原油は8月に年間の安値をつけた事例がありません。したがって、年内の残りの期間で年初来安値を更新するかもしれません。またテロが発生した際、過去の事例では原油価格は直近高値から10%程度下落しています。10%下げると年初来安値更新となります。その場合には、米国株に下落圧力が掛かりますので、戻り局面ではやはり手仕舞い売りを進めておきたいところです。もっとも、安値を付けると、12月のOPEC総会で「電撃的な減産合意」の可能性も否定できません。今後の原油市場の動向には要注目です。
原油価格が安値更新すれば、石油・非鉄鉱山株が急落すると思われます。しかし、長期的な視点で投資を検討したいところです。私は将来的には原油価格の反発を想定していますので、これらの銘柄群は長期的には魅力的な投資対象になると考えています。
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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草出版)
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