マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
米国株は直近では戻りを試す動きにあります。しかし、この戻りが持続的なものになるには、材料が不足しているように思われます。景気指標はまちまちであり、一時期の悪化傾向にはやや歯止めが掛かりつつあるようにみえますが、改善には至っていません。米国の主要企業の業績も芳しくありません。このような状況ですので、FRB当局者からも、ポジティブな発言は聞かれません。株式市場はまだまだ不安定な状況が続きそうです。
このような不透明な時期には、安全資産としての金(ゴールド)に投資家の目が向きやすくなります。投資家の不安心理を反映してか、金価格は順調に水準を切り上げています。1月29日の本欄で金について触れましたが、金価格は当時の1115ドルから2月11日には一時1260ドルまで急伸しています。その後は一旦下押ししましたが、1200ドルの大台を維持して、再び1230ドル台にまで上昇しています。世界の株式市場が依然として上値が重いこともあり、投資家の資金が金に逃げているわけです。
株式には配当、債券には利子といったインカムゲインという魅力があります。一方、金には金利が付きませんので、そのような魅力はありません。あくまでキャピタルゲイン狙いの投資対象ということになります。ただし、それは金利が高いときの状況でのお話です。今のように、ECBや日銀がマイナス金利を導入するような状況では、金利の付かない金の相対的な価値が高まることになります。また米国では、昨年12月に利上げを行いましたが、市場の混乱や景気の不透明感から、3月の利上げは見送られる可能性が高いとの見方が強まっています。利上げが見送られれば、ドルの上昇に歯止めが掛かり、ドル建てで取引される金価格が上昇しやすくなると考えられます。さらに、債券利回りが低下しているため、実質金利との比較でも金価格は割安な水準にあるといえそうです。
このような市場環境から、今は株式を売却して現金を保有するという選択から、金を購入するという考えになりやすいといえます。欧米では、株式保有に加え、同時に一定の量の金を保有するという考えがあります。特に富裕層は「資産をいかに減らさないようにするか」を考えて運用しています。そのため、金保有の重要性をよく理解しているといいます。
ただし、市場が大きく混乱し、現金化を急ぐ動きが加速すれば、2008年のリーマンショックのときに見られたように、金も同時に売られるということも想定されます。しかし、当時を振り返ると、一番早く立ち直ったのも実は金でした。結局、市場が混乱しているときには、金への関心が高まるということです。本欄でも解説しましたように、今年の米国株は軟調に推移しやすい傾向があります。日本株など他のリスク資産もその影響を少なからず受けるでしょう。そのような事態に備えて、金への関心を高めておきたいところです。
さて、1月29日の本欄で取り上げたバリック・ゴールドですが、さらに上昇を強めており、取り上げたところから約20%の上昇となっています。現在のような株式市場が不安定な状況が続けば、これまで売り込まれてきたこともあり、上昇基調が続くかもしれません。またその他の資源株・石油関連株もこれまでの下げが厳しかったため、反動的な上昇になるかもしれません。金鉱株・資源株を安値で購入し、中長期的に保有するのに良いタイミングといえそうです。
--------------
江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草出版)
マネックスからのご留意事項
「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。