マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
米国株の堅調さが際立っています。景気指標が安定し始めていることや、FOMCでハト派的な見方が示されたことなど支援材料になっています。16日のFOMC声明では、経済見通しをやや下方修正しましたが、一方で世界情勢や景気動向に配慮した上で金融政策を決めるという姿勢を鮮明にしました。またFRB関係者が想定する年内利上げペースが、昨年12月の4回から2回に引き下げられ、これを受けてドル安が進んでいることも、米国の多国籍企業の収益改善期待につながっているといえます。ダウ平均株価も年初の水準を回復し、上昇への期待がますます高まりそうです。
今後の米国株の方向性を見る上で、昨日発表になったフィラデルフィア連銀の3月の製造業景況指数の動向に注目しています。昨日発表された数値は、市場予想を大きく上回り、株価の支援材料になりました。指数を構成する項目のすべてが上向いており、これは非常に珍しい状況といえます。このような状況になったことが過去8回あります。その際の1カ月後のS&P500のパーフォーマンスは平均1.7%上昇となっています。また3カ月後は3.6%上昇、6カ月後は8.0%上昇となっており、この指数が強い内容だったときには、株価はかなり堅調に推移しやすい傾向があるといえそうです。また過去8回のうち、株価が上昇したケースは6回ですが、その際には1カ月後、3カ月後、6カ月後のすべてが上昇しており、逆に2回の下げたケースではそれぞれすべて下げています。つまり、この指標が示す株価の方向性はきわめて明確であるということになります。したがって、1カ月後のS&P500が上昇していれば、半年後には相当の上昇になっている可能性が高く、計算上はそこから5カ月間で平均6%超のリターンが望めることになります。逆に下げていれば、上値の重い展開が続くことになりそうです。1カ月後の株価水準に注目しておきたいところです。
市場では、株価の上昇を受けてVIXが低下していることも好感しているようです。しかし、ここに落とし穴があると考えています。VIXは「ボラティリティ・インデックス」の略で、投資家心理を示す指標とされており、「恐怖指数」とも呼ばれています。VIXはS&P500を対象とするオプション取引の値動きを基に算出されており、通常は10~20の範囲で変動します。しかし、この指数が急伸する際には、多くのケースで株価が下落しています。過去を振り返ると、1997年10月のアジア通貨危機では38.20まで上昇し、1998年8月のロシア通貨危機では45.74をつけました。2001年9月の米同時多発テロでは43.74、02年7月のエンロン不正会計事件の発覚の際には45.08、03年3月の米国によるイラク侵攻時には34.69、08年10月のリーマンショック時には過去最高の89.53をつけました。さらに11年9月の欧州債務危機でも48.00まで上昇しました。注意したいのは、これらの事象が起きる前のVIXは20を大きく下回った水準にあったということです。つまり、現在の低ボラティリティは、将来の株価急変の予兆とも言えるわけです。私はオプションも取引しますので良くわかるのですが、このようなときにオプションでヘッジしておけば、その後の市場の急変を利用して収益を獲得できることが多いのです。現在のVIXが低いのは、今の市場の状況を反映しているにすぎず、将来の株高を意味していない点を理解しておきたいところです。
江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草出版)
マネックスからのご留意事項
「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。