第96回 「国内ETFの流動性は板を見る」 ETF解体新書

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第96回 「国内ETFの流動性は板を見る」 ETF解体新書

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。米国のETF情報サイト「ETF TRENDS」によりますと、米国上場のETFの90%以上は1日の出来高が50万口未満であり、およそ75%は1日の出来高が10万口未満であるとのこと。
「Don't Let ETF Perceived Liquidity Concerns Scare You Away(ETFの流動性は心配ご無用)」

実は米国ETF以上に出来高が少ないのが日本の市場です。ほんの一握りのETFに売買が偏っているのが現状なのです(日経平均、TOPIXとの連動を目指すETF、レバレッジ・インバース型ETFなど)。仮に皆さんが興味のあるETFを見つけたとしても、出来高の少なさを気にして投資を躊躇されてしまうかもしれません。このようにETFの「流動性リスク」は古くて新しい問題なのです。

具体例を挙げてみましょう。「ラッセル野村小型コア・インデックス連動型上場投資信託」(1312)という日本小型株ETFがあります。当該ETFは「ラッセル野村小型コア・インデックス」との連動を目指します。同ETFの4月22日における出来高はわずか16口でした。これだと買い注文を出しても約定されるかどうか心配になりますね。
このようなケースではETFの「気配値(板)」を見る必要があります。筆者はまずマネックス証券の画面上で、1312の4月22日終値16,750円を確認しました。そして、気配値(板)をチェックしてみました。すると「売気配」のところで、口数と気配値がそれぞれ、167口(16,950円)、 99口(16,890円)、1口(16,810円)、前18口(16,800円)というふうに表示されていました。

たとえば99口(16,890円)とは、「99口分、16,890円で売る用意がありますよ」と手を挙げている状態を指します。このように取引の現場で常に手を挙げている人のことを『マーケットメーカー』といいます。ETFではふつう複数のマーケットメーカーが存在し、気配値を口数とともに提示します(一般に証券会社がマーケットメーカーを務めます)。
ただ、今のケースだと、終値にもっとも近い16,800円でも18口の気配しかありません。また、複数の気配値の提示はあってもかなり飛んでしまっています。もう少し市場価格に近い値で、もっと多くの口数が欲しいところです(このような実態も、板を見ることではじめて分かります)。

次に、1312を売却するケースを想定して「買気配」をチェックしてみました。4月22日当日は、前1,029口(16,760円)、980口(16,750円)、856口(16,740円)というふうに気配値が提示されていました。こちらは市場価格に近い値で相当の口数の提示があり、仮に何百口の売り注文を出しても約定された可能性が高いでしょう。このように「売買高の少なさ」と「流動性の低さ」は必ずしもイコールではありません。ETFの場合、マーケットメーカーがその役割を積極的に果たすことで、円滑な取引は可能なのです。ただし、注文は想定外の価格で約定しないように、成行でするのではなく、必ず「指値」で行うようにしましょう。


コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表  http://www.sinyo-fp.com/

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

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