マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
今回はマーケット全体の変化の兆候について考えてみたいと思います。米国を中心に株式市場は年初から不安定な動きになり、一時大幅安になる場面もありました。しかし、米国株は2月に底打ちすると、そのまま反転・上昇の動きに入り、4月には年初来高値を更新するところまで戻しました。一方、金価格は上昇基調を強めました。金鉱株の上昇を見込んで、バリック・ゴールド株を取り上げました。この判断は素晴らしい結果となりました。昨年の夏場以来、金価格は底打ちから反転の動きに入っていたため、上昇の可能性が非常に高いと判断したわけです。
一方、原油相場は、米国シェールオイルの増産傾向の継続や主要産油国の高水準の生産、世界的な供給過剰感などを背景に軟調に推移しました。しかし、これらの材料が織り込まれる中、下値を売る動きが止まり、原油相場は反発の動きに入りました。産油国会合の決裂にもかかわらず上昇基調を強めており、この動きは意外感をもって受け止められています。
米国株が想定以上に堅調に推移したことは、想定外の動きだったことは、前回の本欄でも説明した通りです。原油高が市場心理を好転させた面はあるでしょう。1~3月期の米国の主要企業の決算がさえない結果でしたが、事前予想を上回ったことや、米国経済指標が堅調だったこと、原油相場が反転・上昇の動きを強めていたことから悲観的にならず、むしろ強気な見方が示されました。また米連邦公開市場委員会(FOMC)では、追加利上げを慎重に行うとの姿勢を鮮明にしたことも、市場に安心感を与えました。
為替については、米国のドル安政策がより明確になっているようです。米国経済および企業の立て直しを図りたい米国は、かなり明確な形でドル安誘導を行っているように感じます。しかし、米国経済指標は弱いものも散見され始めています。ISM製造業景況指数が再び低下し、住宅指標にも力強さがみられなくなっています。雇用情勢は引き続き堅調ですが、4月の雇用統計の内容次第に関係なく、米連邦準備制度理事会(FRB)は拙速な追加利上げを回避するでしょう。これまでは、利上げ見送りが投資家心理を好転させ、株価の反発を呼び込みましたが、今後は景気指標の鈍化が嫌気され、利上げ先送りが米国株の売り材料になるリスクにも警戒が必要と考えます。
米国株が不安定な動きになり、投資家のリスク回避的な動きが強まると、今後は投資マネーがコモディティ市場に向かうと考えています。ドル安がドル建てコモディティ価格を押し上げるとみています。近年は株式とコモディティの値動きの相関が高く、同じ方向に動く傾向が特徴的でした。しかし、今後は投資マネーのローテーションの動きから、デカップリングの動きがみられるのではないかと考えています。その結果、1994年や2009年のように、コモディティ価格は日本のゴールデンウィーク終了後に上昇基調を鮮明にするのではないかと考えています。米国株は「Sell in May(5月に売り逃げよ、という米国の相場格言)」の格言通り、調整色を強めることで、コモディティとのパフォーマンス差をより鮮明にするでしょう。そして、そのけん引役が金になるのではないかと考えています。金は4年ごとのパフォーマンスを調べると、大幅安になったあとは、大幅に上昇する傾向があります。過去の経緯からも、今後4年間で50%から100%を超える上昇になってもおかしくないと考えています。
江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草出版)
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