第101回「ETF誕生小史 その2」 ETF解体新書

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第101回「ETF誕生小史 その2」 ETF解体新書

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。米国初のETF、『スタンダード・アンド・プアーズ 預託証券』(現:スパイダー S&P500 ETF 銘柄コードSPY)は、初日の売買高が100万口を超え、上々の滑り出しでしたが、次の日の出来高は約48万口となり、上場から2週間経った1993年2月11日までには、1日の売買高が2万口程度にまで減ってしまいました。これはETFの存在が無視されたからではなく、この『新しいツール』をどう扱えばよいのか、投資家のみならず、金融関係者も分かっていなかったためだと思われます。
証券会社は「これは株じゃない」と言い張り、投資信託の運用会社は「それは投信じゃないよ」と囁き、投資信託の販売会社は「それって販売手数料が入らないからうちには関係ないよ」と断じてしまう。結局、誰もETFを自分事として捉えていなかったのでしょう。

しかし、新種の商品を見つけた投資家は、自分たちのリズム、自分たちに合った方法で、よい意味で勝手にETFを触り始めます。ちょうど時代の趨勢は、有店舗型証券からオンライン証券へとシフトしつつありました。デイトレーダーと呼ばれる人たちが格安な売買委託手数料を武器に、『分かりやすい投資対象』としてETFを売買し始めます。また、機関投資家と呼ばれるプロの投資家も、短期的に自分たちのポジションを調整するためにETFを使い始めました。具体例を挙げてみましょう。
たとえば、株式ファンドを運用する運用会社は、解約に備えて一定割合のキャッシュを準備しておく必要があります。ある日のマーケットで市場の上昇分を確保したいファンドマネージャーが、キャッシュ部分を用いてETFを買い、マーケットが閉じる前に手仕舞いして夕方にはキャッシュに戻し、投資信託の解約に備えるという超短期のワザがETFでは使えるわけです。

また、ETFの運用会社は口数を増やしたり減らしたりするプロセスや、市場価格と理論価格の乖離を防ぐための裁定取引を、自ら行うのではなく指定参加者(AP)に委ねることで、ETFの運営コストを下げることに成功しました。1993年の終わり、『スタンダード・アンド・プアーズ 預託証券』(SPY)は、紆余曲折がありながらも、純資産残高が5億ドル程度まで成長します。
しかし、2本目のETFが世に登場するのは1995年3月のこと。1999年に「ナスダック100 Index Tracking Stock」(現 PowerShares QQQパワーシェアーズ QQQトラストシリーズ1 銘柄コード QQQ)という人気ETFが登場するまで、SPYは孤独な戦いを強いられたわけです。今では信じがたいことですが、2000年はじめの段階でも、世界のETF本数は30数本に過ぎませんでした。今日、『スパイダー S&P500 ETF』(SPY)の純資産残高は約1,870億ドルと、世界でもっとも大きなETFに成長しています。また1日あたりの売買高はアップル(AAPL)にも匹敵し、『King of ETF』と呼ぶにふさわしい威厳を放っているのです。


コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表  http://www.sinyo-fp.com/

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

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