第18回 米国株の過去最高値更新に注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第18回 米国株の過去最高値更新に注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

市場の雰囲気が大きく変わりつつあります。英国の欧州連合(EU)離脱決定という衝撃的なニュースが報じられたとき、世界の株式市場は大きく下落し、ポンドやユーロが売り込まれました。一部には「リーマンショックの再来」との声も聞かれるなど、一時的に投資マネーが株式市場から流出しました。しかし、その動きは一時的なものにとどまり、投資マネーは再び株式市場に戻っています。その象徴が、米国株の過去最高値更新といえるでしょう。6月の米雇用統計が市場予想を大幅に超える強い内容だったことで、市場の不透明感が払しょくされる格好となりました。しかし、米国株が上昇している背景には、このようなポジティブな背景だけではないようです。

現在、世界の金利はきわめて低い状況にあります。流通する世界の主要国の国債の利回りの半分以上がマイナス金利になっています。その結果、投資家は運用難を強いられており、少しでも高い利回りを求めて、投資先を探しています。もちろん、その中でも米国債はその安全性などもあり、真っ先に買われていますが、そのため利回りがさらに低下するという事態に陥っています。現在の米国10年債利回りは1.4%前後にまで低下していることから、投資家は、投資先について知恵を絞る必要に迫られました。その結果が、米国株への投資の加速と考えられます。米国の主要銘柄には、世界でも名だたる企業が多く存在します。また安定的に配当を行っている企業が多いことも特徴的であるといえます。つまり、安全性と配当利回りという二つの側面から、国債の代替投資先として米国の主要銘柄を買う動きが広がっているというわけです。常識的には、株式が債券の代替投資先になるは考えにくいのですが、現在のような世界的な低金利状態における苦肉の策でもあるといえます。

ただし、ここからの持続的に株価が上昇するためには、企業業績の裏付けが必要との見方が少なくないのも事実です。第2四半期(4-6月)の主要500社の業績は、前期比で5%ほどの減益になる一方、ドル高や原油安の影響がなくなる年後半には増益に転じるとの見方があります。懸念が払しょくされれば、米国株は過去の新高値更新後の上昇パターンのように、さらに高値を目指す可能性は十分にありそうです。ドルについては、英国のEU離脱に伴うドル高基調が是正されることが必要です。欧州中央銀行(ECB)はこれまでの量的緩和策の継続により、ユーロ安基調を容認するでしょう。また追加緩和策の導入を検討するかもしれません。英中銀のイングランド銀行は14日の会合で利下げを見送りましたが、8月の追加緩和の可能性を示唆しています。こうなると、ドル高基調が続く可能性がありますので、注意が必要です。また原油価格についても、上値が重い状況が続いています。1バレル=50ドルを達成したことで、米国内の石油掘削リグ稼働数が回復しており、これが産油量の増加につながるとの観測が高まっています。またガソリン需要期にもかかわらず、ガソリン在庫が高水準を維持しており、ガソリン相場も低迷していることが、原油相場の上値を抑えています。これらの市場環境が改善することが、米国株の上昇には不可欠でしょう。

ダウ平均株価は過去最高値を更新した後、さらに上値を試すパターンが鮮明です。昨年のような、夏場に株価を押し下げるような材料が出てこなければ、高値更新の動きが続く可能性は十分にあると考えられます。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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