第104回「金ETFは保険のようなもの」 ETF解体新書

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第104回「金ETFは保険のようなもの」 ETF解体新書

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。金価格との連動を目指す「SPDRゴールド・シェア」(GLD)は世界初の金ETFとして、2004年の11月に米国市場に上場しました。指数との連動を目指すのではなく、特定の資産価格との連動を目指すETFは初めてで、金地金を取引単位(バスケット)として設定、交換ができる仕組みを内包したのは画期的と云えるでしょう。投資家は文字通り、実物の金を保有するのと同じ効用が得られるのです。GLDは現物の金を裏付けとするETFであり、資金流入があるたびにHSBC銀行のロンドン本店などの金庫に金地金が積み上げられます(GLDに信託されている金はおよそ955トンにも及びます)。当該ETFの1日当たりの出来高は200万口を超え、また純資産額は410億ドルあまりとなっています。
ただし、金は利息、配当を生みません。価格変動の振れ幅はときに株式以上に大きくなります。一般に実体経済が好調であればあるほど、金のパフォーマンスは振るいません。逆に、実体経済に不確実性が満ちてくると、金の価値は高まるというわけです(しばしば「有事の金」という云われ方をします)。実需の点で云いますと、中国、インドにおける金買いは安定しています(所得水準の向上に伴い金を保有する世帯は増えている模様)。また、中央銀行も主な金の買い手となっています。当面の不安材料は米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げでしょう。利息を生まない金にとって金利の上昇はネガティブに働きます。

国内市場に目を転じますと、いくつか存在する金ETFの中で注目すべきは「純金上場信託」(1540)でしょう。こちらも現物の金を裏付けとしたETFであり、2010年6月に上場を果たしました。三菱商事(信託委託者)が金の現物を拠出し、三菱UFJ信託銀行が信託財産として金を保管し、その受益権を証券取引所に上場させたのです。1540は1日当たりの出来高がコンスタントに数万口はあり、純資産額は470億円を超えています。当該ETFの特徴は、一定口数以上の受益権と引き換えに、現物の金に転換(交換)できる点でしょう(具体的には1kg以上の地金を5kgまで1kg単位で交換することが可能です)。
上記は「小口転換」と呼ばれ、特定の証券会社に申し込むことで、金の現物を自宅まで届けてもらえます(ただし諸々の手数料がかかります)。小口転換に必要な口数は金1kgで1,028口であり、8月19日現在の市場価格では436万円弱となります。
最後に「SPDRゴールド・シェア」(GLD)の長期の値動きを振り返ってみますと、2004年の上場時は1口当たりの価格は40ドル台でしたが、2011年8月にはアメリカ国債の格下げを受け1口184ドルの高値を付けました。現在は120ドル台で推移しています。金ETFを保有する本質的な意味合いは、世界経済に対する信頼が失墜した際の『保険』であり、時間分散を行いながら平時に粛々と買い進めるべきでしょう。不測の事態の保険と割り切るなら、金の保有はポートフォリオの5%程度が妥当と思われます。


コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表  http://www.sinyo-fp.com/

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

マネックスからのご留意事項

「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧