マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
13・14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利を0.25%引き上げ、年1.00~1.25%にすることを決定しました。利上げは3月以来で、今年2回目です。また、連邦準備制度理事会(FRB)の保有資産を圧縮する具体策を約3年ぶりに改定し、年内に開始するとしました。また、金利見通しでは「年内あと1回」の利上げ想定を維持しました。イエレンFRB議長は会合後の記者会見で「景気は今後数年間緩やかに拡大する見込み」とし、先行きに自信を表明しました。また、現在4兆5,000億ドル規模の資産の縮小を「比較的早期に始める」としました。FRBは米国債の再投資見送り額を、当初は月額60億ドルに設定し、その後は月額300億ドルに達するまで、1年をかけて3カ月おきに60億ドル増やすとしました。モーゲージ担保証券(MBS)については、再投資見送り額を月額40億ドルから開始し、月額200億ドルに達するまで同様に40億ドル増やすとしました。市場はこのような具体策の公表を想定しておらず、サプライズとなりました。また、開始時期については公表されませんでしたが、イエレン議長が来年2月に退任する予定であるため、年内の資産圧縮開始が妥当と考えられます。
FRBが保有資産の圧縮方法をこれだけ明確に示すのは異例といえます。これは、イエレン議長の後を引き継ぐ次期議長に配慮したともいえます。また、FRB関係者はこれまで、「資産圧縮時には利上げを見送るべき」としています。今回の措置は過去に経験のない作業であり、市場を驚かせないことが不可欠です。したがって、年内利上げは9月まででいったん終了し、その後は資産圧縮の市場への影響を見極めることになるでしょう。そうなると、ドルは上昇しづらくなりそうです。さらにインフレ率が上昇していないことも、利上げ見送りの理由になるでしょう。5月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.9%となり、節目の2%を下回りました。米国のCPIは原油価格との相関が高いのですが、その原油価格が下落しており、今後もCPIは低迷する見通しです。利上げが見送られることで、ドルの上値も抑えられそうです。
重要なことは、ドル安は米国株にとってポジティブ材料であるという点です。いまはFOMCでの決定がタカ派的ととらえられ、ドル高になっていますが、それはいずれ是正されるでしょう。また、最近はハイテク株の不安定な動きを警戒する声が聞かれます。米国でもさらなるハイテク株の上昇を見込む楽観派と、割高との判断から急落を見込む悲観派が存在します。そのため、現在の株価が上下に大きく変動するのも理解できます。また、今年のナスダック指数は年初から2割も上昇しており、上げすぎとの声もあります。しかし、このような強い年は、年末まで上昇基調が続くケースが多いのです。1986年以降で年初から6月初めまでに2割超の上昇となったケースは9回ありますが、86年と87年以外はすべて年末までにさらに上昇しており、それらの年の上昇率の平均は25%に達しています。つまり、今年のパターンは、年末までにさらに上昇するパターンにあるわけです。米国経済の拡大は6月末で96カ月になり、過去平均の95カ月を上回る見通しです。しかし、ITバブル時には120カ月、つまり10年間の景気拡大がありました。今回のハイテク株の上昇が「ITバブル2.0」であるとすれば、2019年半ばまで景気拡大が続くかもしれません。現在の株高基調の最終的なゴールはまだ先にあるように思います。
江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)
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