第1回 金バブルの終焉? 【特集】「豊島逸夫の金道場」

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第1回 金バブルの終焉? 【特集】「豊島逸夫の金道場」

史上最高値1900ドル台を突破した後 1600ドル割れまで急落した金。やはり金高騰はバブルなのだろうか。
金市場にはバブル的と非バブル的な部分が共生しているのが実態だ。
NY先物金市場の投機的な売買は明らかにバブルと思われます。

一方、BRICsが外貨準備としてドルを売り、金準備を増強する動きとか 欧米年金基金の戦略的金保有、そして金需要国一位・二位の中国・インドの民間長期保有現物需要は とてもバブルとは言えないでしょう。

今回の急落は 新雪のドカ雪の如く積み上がった投機買いの残高が自重に耐えかねて大規模な表層雪崩を起こした現象のようだ。しかし新雪の下の根雪はガッチリ残る。これが長期現物保有の部分と言われ、通常マーケットの下値サポートを形成する。

例えば 金価格が1600ドル台まで下がると中国・インドでは現物不足が顕著になる。その結果、香港・ドバイなどの現地渡し金価格が国際標準ロンドン渡し価格より大幅にプレミアムになるという現象が生じている。(ちなみに史上最高値の時は これがディスカウントであった。高値警戒感で買いは引っ込み、逆に投資家の現物売り戻し、リサイクルが急増した結果 現地は需給ジャブジャブ状態。余った大量の金塊がロンドンに空輸で戻されたのだ。)

新興国の現物買いは一件の購入単位が小さいので地味だが、通年で見ると年間金需要の7割を占める。先物と異なり通常買い放しなのでボディーブローの如くジワリ効く。
一方、先物買いはレバレッジがかかるので派手。メディア報道でも"NYのファンド筋の売りで金価格急落"と囃されがち。しかし同日ムンバイ発で"金現物買い急増"などという話はニュースにならない。

しかしレバレッジのかかった売りがワンツーパンチでそのラウンドのポイントは奪っても、先物売りは早晩買い手仕舞われるゼロサムゲームだ。対して長期現物買いは通常買い放し。押し目を狙ってNYの売りを待っていたかのように急落過程で粛々と買い続ける。最後は先物の手仕舞い買い(ショートカバー)と現物買いが同時進行する中で底値が形成されることになる。

今、1600ドル台でそのせめぎ合いが続いている。1500ドル台まで下がると北京の貴金属店では金地金が足りず1週間待ちとなるほどだ。先週も上海の市場関係者が"こんなに売れてモノが足りないのに、なぜ金価格が下がっているのか"と怪訝な顔をしていた。
同日の夜NYと電話で話すと"コモディティーからのマネー流出で金先物買い越し残高が激減している。ショート=空売りは急増中。"というコメント。かなりのoversold(売り超過)状況と見た。買いのエネルギーが蓄積しつつあると考える。

コラム執筆:

豊島逸夫(としま・いつお) 

豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに 金の第一人者として素人にも分かりやすく 独立系の立場からポジショントーク無しで 金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。

ブログは「豊島逸夫の手帖」

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