マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
リーマンショック直後に金は株とともに急落した。
果たして テールリスク(突発的な経済危機など)に対して金のヘッジ機能は効かないのだろうか。
リーマンショック後の金の値動きを検証してみよう。
まず危機の前後にマーケットを支配した現象が流動性不足。市場が疑心暗鬼になりカウンターパーティーリスク(取引相手の破たんリスク)を嫌い銀行の市場からの資金調達が困難になった。そこで銀行は保有する金を売却して資金化する動きに出た。同時にヘッジファンドには顧客からの解約が殺到。顧客の出資金を現金で返還する為に株も金も運用資産総売りを迫られた。更に先物契約で発生した追加証拠金捻出の為に金のポジションを売り手仕舞う動きも顕在化。
特に金は史上最高値圏にあったので含み益を確定して株式の損失を補てんするインセンティブも強く働いたと考えられる。
これら諸々の要因が同時進行して金市場に売りが殺到したわけだ。
しかし、(ここからが大事なことなのだが)換金売りは一巡する。所詮 買って売ってナンボのゼロサムゲームだ。
そこで底を打ってからは長期保有の買いがジワジワとレンジの下値を切り上げてゆく。買いの主体は中国インドの長期現物保有家たち、そして金ETFを長期ポートフォリオに組み込む欧米年金。長期保有を前提とすれば願っても無い押し目買いのチャンスである。買い放しなので買い残高の増加とともに価格水準も確実に底上げされてゆく。そして他のアセットクラスに先んじていち早くリーマンショック前を回復して史上最高値更新を続ける展開となったわけだ。
このケーススタディーは今後ギリシャがデフォルトとなった場合の金価格動向を読むうえで参考になる事例だ。
マーケットの危機感がピークに達するとリーマンショック後と同じような現象が起きるであろう。否、実は既に起きていると考えられる。前回の学習効果で どうせ株も金も総売りになるなら 先取りしてデフォルト前に売っておこうという投資家心理である。ここがリーマンの時との違いと言えようか。既にリーマン以来の規模で換金売りが発生し NY金先物市場の買い越し残高(重量表示)はピークの800トン前後から半分の400トン前後にまで急減。
こうなると実際 デフォルトとでもなれば材料出尽くしで買いが入る可能性もある。まだ1900ドルから1500ドル台までの強烈な下げの余震が残っているので第二波の売りウェーブもあり得る。しかし 現水準から更にリーマンクラスの売りが生じることは考えにくい。
コラム執筆:
豊島逸夫(としま・いつお)
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに 金の第一人者として素人にも分かりやすく 独立系の立場からポジショントーク無しで 金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
ブログは「豊島逸夫の手帖」
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