マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
日本の株式市場が活況です。皆さんは株の売買はどこで行われているかご存じでしょうか。
そう、証券取引所ですね。世界の株式は各国の証券取引所で売買が成立し価格が形成され
ています。ではFX、為替取引はどうなっているのでしょう。
もう一つ質問です。皆さんはドル円のヒストリカル・ロー(歴史的最安値)は何円だと認識していますか?多くのFX業者さんのドル円チャートは「75.56~76.57円」が最安値となっているかと思います。マネックス証券のドル円チャートの最安値は「75.568円」です。ところが、本当のドル円相場の歴史的最安値はウェリントン市場でついた「75.32円」なのです。これはいったいどういうことでしょうか。
為替の取引が成立するのは外国為替市場ですが、証券取引所のように取引所が存在しているわけではありません。投資家が出した売買注文が、株の売買のように取引所に集められるということがないのです。為替の取引は、相対取引、つまり買いたい人と売りたい人が個別に交渉をするのが基本で、銀行の為替ディーラーや為替ブローカーなどが、世界のあちらこちらでインターネットや電話を使って個別に取引を行っているのが実態で、それらをまとめて「市場」と呼び慣わしていのです。皆さんの注文は、口座を作ったFXの業者さんが個人の注文を取りまとめてカバー先の銀行に繋いでいるのです。ですから証券取引所の立会時間があるように「○時から○時まで」というような取引時間の区切りがありません。東京市場というのは、日本の金融機関のディーラー達が出社して帰宅するまでの主要時間をそう呼んでいるにすぎず、それがおおよそ9:00~17:00くらいだということなのです。
為替の取引が多い3大市場はNY、ロンドン、東京。3大市場と呼ばれるのは、この3市場の取引量が大きいというだけのこと。為替の取引は全世界で24時間くまなく行われています。
例えば東京市場を引き継ぐロンドン市場は、夏時間なら東京時間で16時頃(冬時間なら17時)から始まるので、引き継ぎ時間帯の方がむしろ厚い(ボリュームの多い)取引が行われていますね。東京時間に凪いでいたドル円相場が夕方になって急に動き出すのはロンドン勢が活動を開始し始めたということなのです。
また、ニューヨーク市場がクローズするニューヨーク時間の17時は、東京の朝6時(冬時間なら7時頃)。しかし東京勢が仕事を始めるのは9時頃なので市場に厚みが出てくるまで2~3時間の取引の薄い時間帯が生じます。実はこの時間帯に取引が活発にされているのがニュージーランドの首都ウェリントン市場で、実はウェリントンが外国為替市場の中では1日で最も早くスタートする都市なのです。ウェリントン市場は日本時間の午前5時頃にスタートし、その後シドニー、東京、香港など世界の各都市での為替取引が活発となってバトンタッチしてゆき、1日で最も遅くスタートするニューヨーク市場が終了する前に、ウェリントン市場が再び開始することで、外為取引は24時間可能となっているのです。
実はドル円相場の歴史的最安値が付いた2011年10月31日は月曜日でした。休日明け、NY市場がない中で東京がオープンしたのですが、その前にちょろちょろと始まっていたウェリントン、シドニー市場で付けたのが「75.32円」だったのです。
この値段が成立したことは事実で間違いないことなのですが、東京時間のオープン前だったため、東京スタートのFX会社のチャートには繁栄されていないと事態になったわけです。
一瞬のことでしたし、東京時間前でしたのでこの価格で取引したという日本勢はいないはずです。ということで、この32銭という価格は市場では「幻の値段」などと呼ばれているのです。
こうした「幻の値段」が付くことはままあって、例えば週末の土曜日曜にG7があったり、欧州の債務問題が噴出したりと市場を揺るがす大きなニュースが飛び出したりすると、為替ディーラー勢は一刻も早く取引がしたいために、東京市場を待たず、ウェリントンやシドニー市場で注文を出すのです。昨今では午前2時3時ごろから取引が成立していたというケースも見られるそうですので、近年為替市場では「休みも厭わぬ仁義なき戦い」が繰り広げられているのですね。取引量の少ない薄い時間帯ですので、思わぬ極端な価格で取引が成立することがあり、ファンド勢など投機筋が暗躍するというイメージですが、大局で相場を見るならば75.32円でも75.56円でも別にかまわないじゃないか、と思います。75.50円が割れたら困るというオプションでも保有していない限り、トレンド分析には大きな違いが生じるものではありませんものね。一般的にはこの幻の値段は加味せずテクニカル分析をして構わないという認識です。チャートに反映されていないのですから当然ですけれど...。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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