マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
ドル/円相場は111~115円台でのレンジ相場に入っています。トランプラリーで一気に18円も上昇した後は、7円ほど下落してしまっているわけですが、50%押しレベルが110円前後ですので、その近辺までの円高ドル安があってもなんら不思議はありません。ただし、米国が年3回の利上げの方向にある反面で、日本は日銀による量的緩和政策が継続中であるだけでなく、2016年にはイールドカーブコントロールと言って、日本国債10年物の利回りをゼロ近傍に固定するよう調整して国債買い入れ量をコントロールするという政策を打ち出しているため、日米の金融政策面から日米金利差は拡大圧力が大きく、110円を超えても円が積極的に買われることはないと思われます。では逆に何故、利上げ方向にある米国のドル上昇が鈍いのか?!これは、利上げが2015年からのマーケットのテーマであり続けたために新鮮味がなく、市場のテーマの主軸ではなくなってきてしまったのだろうと考えられます。
こうした中で、注目なのがユーロ。
欧州債務問題、ギリシャ危機、ドイツ銀行のデリバティブ損失問題など欧州にはネガティブな材料が山積しており、ユーロ/ドル相場は「パリティ(1ドル=1ユーロの等価となること)」まで下落するとの見通しも多く聞かれましたが、結局今年1月につけた1.0340ドルが安値となって現在は下値を切り上げてきています。
FOMCを経過し、市場の予想を上回るような利上げのスピードにはならないことが確認されたことで、ドル高の勢いが落ち着いてきていることも足元のユーロ上昇の一因ですが、それだけではありません。ユーロが積極的に買われる可能性を秘めた材料が出てきたのです。
ECB理事会メンバーであるノボトニー・オーストリア中銀総裁が17日、独ハンデルスブラット紙のインタビューで、「ECBは緩和的な金融政策を縮小させる可能性があるが、利上げ前に債券買い入れ策を終了させた米国型のモデルは欧州ではうまく適用できない可能性があるため、米国型モデルは踏襲しない」との考えを表明。さらに、利上げを債券買い入れプログラムの終了前にするか、後にするか今後決定すると語った、と報じられました。
これを受けて、マーケットでECBの利上げ観測が高まり、短期金融市場は12月のECB理事会で約80%の確率で利上げが実施されるとの予想を織り込む形でユーロが買われる値動きが出たのです。(1週間前は60%程度)
来年1月の利上げ確率は90%、3月は100%となってきています。実は3月9日のECB理事会でも「当局者の一部が前日の理事会で資産買い入れ終了前の利上げを主張していた」ことが報じられています。おそらくこの当局者の一部というのが、ノボトニー氏だったものと推察されますが、この方、ECBが政策を転換する際のキーパーソンとしても知られているため、今後この議論がECB内で活発化していくだろうと思われるのです。
先週15日にはオランダの選挙は波乱なく通過しましたが、4月にはフランスの大統領選挙、9月にはドイツの選挙を控えており、今年は欧州の政治がマーケットのリスク要因になると警戒されていますが、政治リスクがあるから単純にユーロが売られるでしょうか。リスク警戒で仮にユーロが売り込まれることがあれば、それが実現しなかった場合は逆に売りが買い戻されてユーロが上昇する圧力にさえなります。政治リスクだけが通貨の変動要因ではありません。金融政策の変化、転換も大きな材料であり、いよいよECBが出口の議論を始めるとみられることは、マーケットにとって新鮮味があり、織り込みが始まるのはこれからです。2017年は意外とユーロが上昇基調を強めるかもしれません。
ただし、足元でユーロの下値が切り上がってきているとはいえ、ユーロ/ドル相場は2015年3月から長くレンジ相場が続いており、週足レベルでは1.15ドル台をしっかりと固めてくるようになるまでは上昇トレンドに入ったとは言い難く、短期的には2月2日の1.082ドルをしっかりと超えてくることがあれば、強気転換のサインとなりそうです。政治リスクでユーロを売り込む動きが全くでないということではありませんので、フランス大統領選前後には注意が必要ですが、ここからはユーロ/ドルの押し目買い戦略が期待できそうです。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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