第262回 ドル/円相場と日経平均の相関性が低下の何故【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第262回 ドル/円相場と日経平均の相関性が低下の何故【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

日経平均は2万円の大台を回復し堅調に推移していますが、ドル/円相場は110円が支えられるか否か、、、という展開に。チャートを比較してみると、足元では日経平均とドル/円相場が逆相関関係にあります。これは一体どうしたことでしょうか。今回は、日経平均株価とドル/円の相関性が薄れていく可能性について考察してみました。

日本の株式市場は、ドル/円の為替レートに大きく影響を受けます。為替が円安になれば、日経平均株価は上昇するというのが教科書的に語られていますが、どのような理由でそのような値動きとなるのでしょうか。

資源のない日本企業はモノづくり大国。自動車や電気製品などを製造し、輸出することで利益を上げる輸出企業は、一般的に円安で競争力が高まるとして、業績改善期待が株高を誘引します。つまりドル/円相場の変動が先行し、結果として、それらの影響を強く受ける企業の株価が動くとされています。特に2011年以降のアベノミクス相場では、日銀によるバズーカと称される金融緩和政策が、スケールの大きい円安ドル高相場を演出、為替相場が主導して日経平均株価が上昇してきました。しかし、2015年にドル/円相場が125円台まで上昇した時期が日経平均の20,900円台の高値となっており、その後の円高と歩調をあわせて日経平均も15,000円割れまで崩れてしまっています。アベノミクス相場では、特にその相関性が強かったことがうかがえます。

海外投資家の一部は、日本株への投資を行う際に円を買って日本株を買うのですが、先行きの円安リスクが存在する場合は、円買いした分の為替差損を避けるために、同時に為替市場では「円売り」を行うと指摘されています。これで海外勢は為替リスクなしに、日本株上昇のキャピタルゲインのみを狙うことができる、ということで、この時点では為替への影響は中立です。しかし、日本株とドル/円の相関が強いと見れば、為替市場での円売りをヘッジ分だけでなく追加の円売りをすることがあり、こうしたオペレーションが、日本株とドル/円の相関性をより強めていると想定されてきました。

では、なぜ足元でこの相関が崩れているのでしょうか。

理由はズバリ、なかなか上がらない米国の長期金利にあると思われます。ドル/円相場の変動要因の一つに「日米金利差」がありますが、10年物国債利回りは2.6%台でWトップとなって、下落基調にあります。米金利が上昇しなければ、日米金利差が拡大しません。金利が上昇しないことで、ドル/円相場が上昇できずにいるのです。金融市場では、6月のFOMCでの利上げはほぼ市場に織り込まれているとはいえ、その次の9月.12月の利上げまでは織り込まれていません。足元では、雇用統計の数字や住宅関連指標などの弱い指標も気がかりとなってきています。金利市場はすでに6月ではなく、その先の追加利上げの織り込みを見ているのです。

しかしながら、なかなか上がらない金利は米国株市場にとって好材料です。低金利状態が継続すれば、株式の益回りが魅力である状態は続きます。金融市場はゴルディロックスと呼ばれる、ぬるま湯状態。低金利が株式市場の安心感につながっているのです。米株が史上最高値を更新する中、日本株は、世界の機関投資家らにとって「アンダーウェイト」となっていました。アンダーウェイトというのは、ポートフォリオに占める比率が少ないという状態。米株は上昇することで自然にオーバーウェイト化する中で、日本株の保有比率が低下してしまっていた、ということですね。年明けには東芝問題、春先には北朝鮮有事などのリスクから、敬遠されてきた日本株ですが、6月に入ってカレンダー替わりのタイミングで、機関投資家らはアンダーウェイトである日本株の比率を、高めるオペレーションを一斉に行っているとみられます。新年度第1四半期、4月は特にフランス大統領選や、北朝鮮有事に警戒が強かった時期ですが、6月で第1四半期も終了します。機関投資家らは、米株だけが高値を更新していく中、アンダーウェイトである日本株を買わざるを得ない状況に追い込まれているということでしょう。これが、ドル/円が上がらない一方で日本株が上昇している背景と思われます。

実は、日経平均とドル/円の比較チャートをじっくり検証してみると、92年末~94年頃に掛けては円高が進んでいましたが日経平均株価は上昇していました。1997年~2002年の5年間に見られた円安ドル高相場では、日経平均は下落の一途をたどっており、完全に逆相関の関係であったことが確認できます。日経平均とドル/円相場は、必ずしも順相関で動くわけではないのです。このまま低金利時代が続くようなら、ドル/円相場は上がらずとも、株価は上昇していくという逆相関となる可能性もあるのではないでしょうか。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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