第267回 指値オペって何?!2017年後半円キャリートレード本格化へ【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第267回 指値オペって何?!2017年後半円キャリートレード本格化へ【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

円安の流れがさらに加速しそうです。ユーロ/円やカナダドル/円などのクロス円相場はすでに大きな円安トレンドが醸成されているのですが、この流れはまだ継続するだろうことが、改めて確認できたのが7月7日金曜日の日銀の指値オペ。

指値オペとは、日本銀行が決まった利回りで金融機関から国債を無制限に買い入れるオペレーションのことです。昨年2016年9月に日銀は、「イールドカーブ・コントロール」を導入。短期金利と共に長期金利を操作する新たな金融政策で、長期金利を「0%近傍」に誘導するものです。簡単に説明すると、「金利上昇させないために日銀は無制限に国債を買うよ」という宣言です。

果たして、本当に長期金利をゼロ(近傍)に誘導、固定することは可能なのか。市場の懐疑的な見方を払しょくしたのは2か月後。米大統領選をきっかけに「トランプラリー」と呼ばれる米国の長期金利上昇が日本の国債利回りにも上昇圧力となりました。それまでマイナス圏にあった長期金利がプラス圏に浮上、日銀は11月17日に初めて「指値オペ」を実施し、金利上昇にブレーキがかかりました。実際には、利回り水準は指値オペの水準には未だ達していないかったことで金融機関からの応札額はゼロでしたが、指値オペ実施の通達だけで、金利上昇にブレーキをかけることに成功したのです。

2回目は今年2月。米長期金利の上昇には歯止めがかからず、再び日本の長期国債にも上昇圧力が強まったことで日銀は「0.110%」で残存期間5年超10年以下の長期ゾーンの国債を無制限に買い入れる指値オペを実施。この時はオペ公表前の市場価格が日銀の提示価格より低かったため、7,239億円の応札がありました。日銀が7,239億円の国債を金融機関から買い入れることで、金利のさらなる上昇にブレーキがかけられたということです。

そして今回。指値オペ対象は、残存期間5年超10年以下の長期ゾーンで、買い入れる利回りは前回2月と同じ0.11%を指定。つまり、日銀は長期債利回りの「0.110%以上の上昇は許さない!」というスタンスを明確に示した、ということでしょう。「0.110%」これが防衛ラインだと示されたということです。ゼロ近傍固定の日銀の政策は鉄板である、この認識が改めて確認されると、為替市場では円売り(円安)が再開、大きくクロス円、ドル/円相場が上昇しました。

そもそもの足元のクロス円・ドル/円上昇は6月27日のECB年次政策フォーラムで、ECBのドラギ総裁がデフレからリフレ的になっている、と緩和終了に言及したことや、英国BOEカーニー総裁も「BOEの刺激策の一部解除が必要となる可能性」と発言したこと、さらにはカナダBOCポロズ総裁も利上げを検討する可能性をあらためて示唆したことなどで、欧州圏、英国、カナダなど量的緩和終了を示唆した国の長期債利回りが上昇、これに連れて、4回目の利上げやバランスシート縮小のロードマップを示した6月のFOMCを受けても上昇することがなかった米国債の長期債利回りまでもが上昇しはじめたことにあります。さらにそれに影響されて日本の長期債利回りまでもが上昇してきたことで、日銀が「金利上昇は許さない」姿勢を示したというものですね。

為替市場は、他に大きなテーマとなる材料がない場合、金利の高い方に資金が流入しやすくなります。FXでも金利差はスワップ収入となりますので、金利の高い通貨は売るよりも買う方が、メリットが大きいですよね。世界の先進国が、緩和終了・利上げを示唆する中で、日本だけが量的緩和を継続しており、7日に改めてそのスタンスを強固に示したのです。日本と各国の金融政策の違いが、足元の為替市場での最大のテーマとなっており、これは、他に大きな材料(有事勃発など)が生じない限り継続していくものと思います。つまりクロス円上昇が、まだまだ継続すると思われるということです。

また、各国の金利上昇に連れて上がり出した米国長期債利回りも、ドル/円相場の上昇要因としてクローズアップされてくるものと考えられ、ドル/円相場も120円方向へと動き出したように見えます。

今週は12日カナダの政策金利の発表が予定されていますが、今回の利上げはなくても、声明文や会見で次回の利上げを示唆すれば、カナダドルのさらなる上昇があるかもしれません。逆に、今週12日に向けてカナダドルが大きく上昇してしまったことで政策発表後、失望によりカナダドルは、大きな調整を強いられるかもしれません。ただ中長期的には、日銀のスタンスから円売りは継続しますので、再びカナダに利上げの期待が高まれば、カナダドル/円上昇トレンドは崩れることはないでしょう。今週政策金利発表後にカナダドルに下落があれば買い場になるものと思っています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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