マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
日本と同様、中国でも初婚年齢が年々上昇しており、また一人っ子政策の撤廃にもかかわらず、若い夫婦は複数の子を持つことに消極的と言われ、日本を上回るペースで少子高齢化が進んでいます。
1980年代から90年代生まれの人達が結婚年齢に達していますが、80年代は中国全土で一人っ子政策が施行された時期で、出生数が少なくなっていますので、結婚や出産に消極的となりますと、人口構成がますますいびつになってしまいます。
上海の有名大学である復旦大学の研究所を中心とする調査チームが、このほど上海市民の80年代生まれの層を対象に結婚についての調査を行い、結果を公表しました。
80年代生まれ(年齢28歳から37歳)の男性は19.2%が、また女性は12.5%が未婚という結果になりました。
比較が難しいのですが、2005年に、当時30歳から34歳の層を対象に行った調査では、男性の12%、女性の7%が未婚でしたので、未婚率あるいは初婚年齢が上昇傾向にあることは間違いないように思われます。
もっとも、日本の状況を見ますと、2010年の調査になりますが、男性は30~34歳の未婚率が47.3%、35~39歳では35.6%となっており、また女性は30~34歳で34.5%、35~39歳で23.1%ですから、日本との比較ではまだまだ中国の方が結婚に前向きと見ることができます。
調査を指揮した復旦大学の准教授は、未婚率の上昇を、単に結婚を先送りしているためか、あるいは既に諦めているためなのかはわからないとし、今後、日本や韓国のように、さらに未婚率が上昇するのかどうか注目していると述べています。
また、同大学の教授は、今後も調査を続け、更なる知見を得られるよう努めると話しています。
未婚率の上昇をもたらす要因として有力視されているのが、都市部を中心に一般的になりつつある同棲です。
今回の調査では、調査対象者のうち、既婚者の40%が結婚前に同棲していたと回答しています。
中国では、長く同棲はタブー視されていたそうですが、近年ではカップルが互いの相性を見極めるための手段として活用されつつあります。
調査では、同棲を経て結婚に至った夫婦や、結婚に至らず別れたカップルなど、様々なケースが確認されました。今後の調査でどのような結論が導かれるのか、注目したいところです。
経済発展前の、仕事といえば農業あるいは肉体労働が中心という時代でしたら、早くに結婚し、多くの子を儲けて仕事に就かせ、家計に寄与してもらうという考えが主流であったかもしれませんが、現在の中国、特に都市部では日本と同様、より少数の子に金をかけ、良い教育を受けさせたいと考える人達が増えています。
そのためには、まずは自身の収入が大事ということで、職業経験を積み、キャリアを形成した上で結婚、さらには子育てに進みたいと考えるのも当然と言えます。
年金など社会保障制度が未整備の中国で、少子高齢化がさらに進むことで、高齢者福祉の問題(伝統的な「子が世話をする」との考え方vs公共サービスに委ねるとの考え方)が一段と深刻化することが予想されます。
政府は、「一帯一路構想」など、経済成長の持続に躍起ですが、社会では時限爆弾のタイマーが着々と時を刻んでいるようにも見えます。
中国社会の姿が、日本に重なるようにも、またさらに先を進んでいるようにも見える話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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