第268回 20日ECB理事会、密約説まで飛び出した緩和縮小に言及あるか【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第268回 20日ECB理事会、密約説まで飛び出した緩和縮小に言及あるか【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

今週は20日木曜日のECB理事会に大注目。2017年後半は、米国の利上げとバランスシート縮小に踏み込む時期が注目となると目されてきましたが、にわかに欧州の緩和縮小、カナダの利上げ、英国の利上げなど、先進国各国の金融政策の転換が大きなテーマとなってきました。15日土曜日の日経新聞は一面で、6月下旬のポルトガルで開催されたECBフォーラムにおいて、各国中銀総裁から相次いで飛び出した緩和解除に言及する発言から「各国中銀が引き締めに転じる前提で協調に向けた密約を結んだ」と、ささやく市場関係者がいると報じています。密約説というと、2016年2月に上海で開催されたG20で各国が「ドル高抑制」をのんだとする「上海合意」が記憶に新しいですが、こうした市場の噂は推察に過ぎず、決して各国首脳らがそれを認めることもなければ証拠が出てくることもありません。ECBフォーラム会合の直前の6月のFOMCで米国イエレンFRB議長は量的緩和で膨らんだ保有資産の圧縮を年内にも開始することを示唆。英国、BOEのカーニー総裁は直前まで利上げを否定していたにもかかわらず、フォーラムで「数カ月内の金融引き締め」の可能性に突如言及する掌返し。カナダ、BOCポロズ総裁は同地で利上げを宣言、その直後の7月12日、6年10カ月ぶりにカナダは本当に利上げに踏み切りました。
「密約」の背景には、一部の国が引き締めれば当該国が通貨高に見舞われ負のインパクトが集中するため、緩和縮小には各国通貨が足並みを揃えなければならない、との指摘には、説得力がある流れではありますが、、、。

その真偽が試されるのが今週20日のECB理事会です。
ECBのドラギ総裁は、密約がささやかれる6月のECBフォーラムにて、「ユーロ圏経済は回復の新段階に入ったものの、このトレンドを盤石にするための支援として、緩和的な金融政策が依然必要だ」としながらも、「今は全ての兆候がユーロ圏の回復の強さが増し、裾野が広がっていることを指し示している。デフレ圧力はリフレの力に置き換わった。インフレ率を低く抑えている要素の大半は一時的なものだ。」と語ったことに驚きが広がりました。発言を受けて、欧州債利回りが急上昇し、ユーロも急上昇。ユーロ高のトレンドは未だ継続しています。

先月のECB理事会では景気の下振れリスクの文言は削除したものの、「必要なら債券購入プログラムの拡大延長を行う」という文言は温存されていました。兼ねてからドラギ総裁は、緩和を継続するハト派的スタンスを貫いてきており、突然のインフレへの言及で、いよいよ欧州も緩和縮小に踏み切る時期が近いとの思惑が広がったのです。今回はこの「必要なら債券購入プログラムの拡大延長を行う」部分が削除されるとの見方が有力ですが、実は、市場の過剰期待をけん制するために温存されるとの見方も一部では根強いのです。

というのも「ECBの政策に関する議論に詳しい3人の関係筋」がECBは量的緩和を終了する時期を明言することに消極的である、とメディアに話したと報じられているのです。その関係者らによると、現時点ではいかなる決定も下されておらず、議論は現在も続けられているということで、これが事実だとするならば、足元のユーロ買いにはリスクが伴います。IMMの通貨先物ポジションで投機筋らの動向を確認すると、先週7月11日時点でのユーロのポジションは買い越しが8万3,788枚にも積みあがっています。(買い越し=買いポジションと売りポジションを相殺し、買いが多い状態)これは2007年以来の高水準に迫っており、10年ぶりのレベルにまでユーロ買いが膨らんでいるということ。

ECBは将来、見通しが悪化した場合に備えて、金融政策の柔軟性を確保したい意向とも報じられており、特に来年初め頃に行われるドイツの賃金交渉を注視しており、交渉で予想外の結果が出た場合に備えたいということのようです。

果たして、市場の思惑通りに今回20日のECB理事会で金融政策の正常化に向けてあらためてタカ派トーンが示されるのか否か。20日に向けて市場の思惑が高まりユーロが一段高となっているようなら、注意が必要です。期待通りの内容となっても「噂で買って事実で売り」の展開となり、ユーロの利食いによる下落リスクも。また、緩和縮小へのロードマップが示されることなく期待外れに終われば、ユーロの下落は比較的大きくなると思われます。文言削除だけでなく、具体的な緩和縮小のロードマップが示されればユーロは一段高へ。今週はユーロが大きく動きそうです。

中長期的には8月のジャクソンホールにドラギ総裁が出席することが報じられており、ここで緩和縮小への言及がある可能性も残されていることから、下がればユーロを買いたい向きはあると思っています。私は、今週ユーロの急落があれば、買いたいと考えていますが、、、。ジャクソンホール会合については、また今度コラムで詳しく書こうと思っています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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