第222回 レンタサイクルに新たな規制を導入 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第222回 レンタサイクルに新たな規制を導入 【北京駐在員事務所から】

北京を初めとする中国の都市部では、この一年ほどの間に、民間業者によるレンタサイクル(バイクシェアリング)のサービスが急速に普及しています。
北京では、Mobike(シンボルカラーはオレンジ)とOfo(同黄色)の2社が目立っており、この2社を他の4~5社が追随する構図となっています。
全国では30以上の業者が事業を行っており、このうちMobikeとOfoの2社で9割以上のシェアを有しているそうです。

北京には市が提供する公共レンタサイクルもあるのですが、定められた場所での借り受けと返却が必要です。一方、民間業者のものは、路上に置かれたものを借り受け、好きなところで返却(乗り捨て)ができますので、非常に使い勝手が良く、人気を博しています。
電子商取引を専門に扱う調査会社によると、レンタサイクルの利用者は2015年に245万人でしたが、昨年2016年には1,886万人と8倍近い増加になっています。
業者が乱立し、また利用者も増えたことで、苦情も増加しており、また一部の地域では乗り捨てられた自転車が歩道を占拠し、歩行者の通行に支障が生じる等、問題も生じています。

このほど、上海市と天津市の政府は、10月1日の施行を目標に、レンタサイクルに関する新たな規制の案を公表しました。
主な内容は以下の通りです。

(1)自転車の耐用年数を3年とする。

(2)自転車200台に対し、保守整備要員1名の確保を義務付ける。

(3)利用者が差し入れる保証金の取扱、苦情等への対応方法、問題発生時の補償等について規約に定め公表する。保証金、前払金の返還は、利用者の請求後7日以内に行う。

上海市では、保証金の返還について、また路上に溢れ通行の妨げになっている自転車についての苦情が特に多いとのことで、今回の規制強化で利用者の、また一般市民の不満が軽減することにつながるか否か、注目されるところです。

当事務所の周辺は、比較的歩道が広く、また置かれたレンタサイクルの数もさほどでないため、問題とはなっていないのですが、一部の繁華街などでは狭い歩道を各社の自転車が占拠し、自家用の自転車や電動自転車と渾然一体のカオス状態となっているところも見られます。
「レンタル自転車専用の駐輪エリア」を定めているところもあるのですが、十分に守られているとは言えず、利用者のマナー、モラルがまだまだと感じさせられることもしばしばです。規制を強化しても、それだけでは実を挙げられないのではないかと考えさせられます。

現在急成長中のレンタサイクルやスマホ決済サービスが典型的な事例と言えますが、中国では、まず規制等が何もないところから事業、サービスが始まり、問題が生じると規制が定められ、あるいは強化されることが普通です。
規制が後追いになることで、これが事業の安定性、継続性に影響を生じる恐れがある一方で、うまく利用できれば、後発の事業者にとって参入障壁が生じ、先行者のメリットを享受できる可能性もあります。
膨大な人口を擁し、潜在市場が大きい中国故に、新たなビジネスを起こすためには非常にやりがいのある環境があると言えます。
もちろん、競争が激しく、失敗のリスクも大きいわけですが。

Mobikeは先月福岡に子会社を設立し、日本での事業展開の可能性について調査を行うと公表しています。また、今秋には札幌で事業化のための実証実験を行うそうです。
日本では、以前より放置自転車の問題が深刻で、中国で提供されているような「路上の任意の場所での乗り捨てが可能」なサービスは認められないとのことですが、利用者の利便性がどの程度確保できるものになるのか、注目したく思います。

レンタサイクル市場の急成長ぶりに、中国のダイナミズムを感じさせられることとなりました。

=====================================

コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧