第272回 アノマリー通りの円高進行?!ここからのポイントは【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第272回 アノマリー通りの円高進行?!ここからのポイントは【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

8月1日のコラムは「8月円高アノマリー通りになるか」というテーマでしたが、8月1日のドル円相場の始値は110.24円。月末までにこのレベルを上回る上昇がなければアノマリー通りの円高の月となりますが、足元では8月11日山の日の祝日にドル円相場は108.71円まで下落し、アノマリー通りの円高圧力が強い展開となっています。

お盆時期、特に日本が祝日で日本勢がいない商いが薄い時の円高進行は驚きに値しません。
海外投機筋がドル円のチャートポイントのブレイクを狙って仕掛けてくるなら、日本勢が休んでいるような流動性の低下しているタイミングは絶好の狙い目です。2017年前半の最大のリスクイベントと見込まれたフランスの大統領選挙に向けてリスクオフ相場の様相となったことで、4月17日のドル円相場は年初来安値である108.13円を示現。以降108円台が今年の下値支持線として機能しています。108円大台を割り込めば長期レンジ相場の下方ブレイクとなりますので、さらなる円高に備える必要がありますが、今のところかろうじてこのレベルでは下げ止まって小幅に買い戻される動きとなっています。

円高のトリガー(引き金)となったのが、北朝鮮問題。これまでも北朝鮮はミサイル発射を繰り返してきましたが、いよいよ米国をターゲットにしていることを明言、この挑発にトランプ大統領が応戦し対立が激化していることで、有事への警戒が強まっています。ここで重要なのが、実際に有事勃発となったことでの下落ではないということ。万が一の時に備える動きに加えて、それを材料にした投機筋の仕掛け的な売りが出ているだけです。後に重要となってくるのは「想定していた万が一の事態が起こらなかった場合」です。

マーケットが大きく動くケースは「想定外」のことが起きた時。想定していないのですから、リスクポジションが大きく、センチメントは比較的楽観的です。そのような時に想定外の事象により手仕舞いを強いられれば、それまで買われていたものが売り込まれ、それまで売り込まれていたものは買い戻されるという逆流現象が急激に引き起こされるため、値動きが大きくなるのです。

では、現状のマーケットはどうでしょうか。

ドル円相場の足元の下落トレンドは7月11日を起点にすでに1か月続いています。背景には、米国のインフレ期待がなかなか高まらないことで米金利が上がらないことに起因するドル安もあり、決して北朝鮮問題だけで下げているわけではありませんが、1か月あまりに及ぶ下落の中で、楽観が支配するリスクポジションの偏りはかなり整理されてきたと思われます。現状ではリスクに備える動きがすでに出ており、有識者らにインタビューするとヘッジファンドらのキャッシュポジション(現金保有率)が非常に高い状況にあるようです。さらに、有事に向けて短期的な利潤を追求する投機筋らによるドル円の売りや、米国、日本株の売りが増えて行くようなら、そのポジションがいずれ買い戻されるときには、踏み上げ上昇相場が演出される可能性も否定できないでしょう。

足元ではレンジ相場の下限である108円台がサポートしているドル円相場。実はNYゴールド相場と綺麗な逆相関関係にあります。ドル建てのゴールド価格は1,300ドルの節目が上値抵抗となるレンジ相場を形成していますが、足元のドル安と有事リスクの高まりで3度目の1,300ドル大台トライの展開となっています。ゴールドが1,300ドルを達成できずに再びレンジ内へと下降する時こそ、ドル円相場が108円台まで下落した後に切り返して上昇するタイミングと綺麗に合致しています。今回の上昇でゴールドが1,300ドル大台を突破する流れとなるなら、ドル円相場は108円台をサポートできずにさらに円高になるリスクがあるということですが、北朝鮮有事が現実となった場合の衝撃がマーケットを覆っているということなのかもしれません。どちらにしても対処できるようにリスクポジションは極力小さくしておくことが肝要な時期です。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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