第226回 航空機内のアナウンスに地元の方言を導入 【北京駐在員事務所から】

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第226回 航空機内のアナウンスに地元の方言を導入 【北京駐在員事務所から】

上海に本社を置く上海航空が、このほど、乗客の要望を受け、一部の便で上海語での機内アナウンスを始めました。
予め録音されたものになりますが、上海-台北線と上海-昆明(雲南省)線で、8月末まで試験的に実施し、乗客の反応を見た上で、9月以降の採否を決めるとのことです。
メッセージは1分間で、離陸前と着陸前に、シートベルトの着用など、乗客に注意を促す内容になります。

同社は、2012年から数年間、上海語での機内アナウンスを行っていましたが、今回再開しました。
純粋な上海語でのアナウンスとするために、同社では地元出身のオペラ歌手と、同社の客室乗務員部門のスタッフとのペアにより録音を行いました。
上海語でのアナウンスの再導入には、上海のイメージアップと文化の宣伝、ならびに同社の「上海ブランドの確立」という意図があるとされています。
同社では、アナウンスを行ったフライトで、乗客に対しアンケート調査を行い、その結果に基づき、サービスの改善を図るとしています。
上海市内の一部の公共交通機関では、上海語でのアナウンスが行われており、利用客の反応はおおむね良好とのことですので、今回の上海航空の取組も、乗客から良い評価を受けることが期待されます。

中国は国土が広く、また多民族国家ですので、全国には様々な言語が存在します。
一般に「中国語」と言われる「漢語」も、学校教育で全国的に用いられる「普通話」と、南部で広く普及している「広東語」は、日本の語学学校で全く別の言語として教えられているくらいの大きな違いがあります。
上海語は、普通話と極端な差は無いのですが、それでも一部の単語の発音は明らかに違います。
私も、以前上海に出張し、地元の人たちと話をする機会があったのですが、違和感なく聞き取れる部分と、「明らかに違う」と感じる部分がありました。
上海の人たちにとっては、上海語を耳にすることで、「ほっとする」あるいは「安心する」といった効果が得られるのでしょう。

一方で、中国政府は、普通話の普及を全国的に進めており、数十年後には方言を使う人が大きく減ることも予想されます。
広東省では、広東語を将来に渡り守ろうという運動が行われており、また同じく広東語を使用する香港の大学では、学生が普通話での授業の導入に反対しているとの報道もありました。
普通話以外の言語をどのように維持していくのかは、少数民族問題などにもつながりますので、中国政府あるいは中国人にとってはデリケートな問題です。将来、中国で日常的に話される、あるいは学校教育に使われる言語がどのようになっていくのか、注目されるところです。

北京の天安門広場や繁華街の王府井では、全国各地からの旅行客が多く集っており、明らかに普通話と異なる会話が乱れ飛んでいます。東京に例えると、天安門広場が皇居前広場に、また王府井は銀座あるいは浅草の仲見世通りに相当するのでしょうか?
さらに、最近では休日の東京、銀座通りの歩行者天国でも、普通話ではない中国語の会話が盛んに聞かれます。2020年オリンピック・パラリンピック開催の頃にはどのようになっているのか、今から想像を掻き立てられてしまいます。

航空会社の機内アナウンスの話題から、中国の多様性や、社会の複雑さが垣間見えるように思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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