第233回 レンタサイクル用の補助椅子 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第233回 レンタサイクル用の補助椅子 【北京駐在員事務所から】

中国の都市部で急速に普及するレンタサイクルについては、これまでも本コラムでご報告しております。
北京でも、一部の地下鉄駅やバスターミナルの近隣では自転車が溢れるほど供されており、事務所の近くで見ても、道路を走る自転車の半分程度がレンタサイクルになっています。
「レンタサイクルが中国を自転車の時代に戻した」と指摘する声も聞かれます。
大変便利で、多くの人に利用されているレンタサイクルですが、不適切な場所での乗り捨てや自転車の破壊行為など、利用者のマナーに起因する問題も増加しており、徐々に規制が強化される方向にあります。
先日、新聞を見ておりましたら、ネット通販サイトで、「レンタサイクル用の脱着式チャイルドシート(幼児用の補助椅子)」が販売されているとの記事を目にしました。
ハンドルの下とサドルの下をバーでつなぎ、その中間に椅子を取り付ける構造になっています。バーの長さが可変式になっており、様々な自転車に取り付けられるそうです。

日本でも、自転車の補助椅子に子供を乗せた場合の安全性の問題、特に「3人乗り」がクローズアップされていますが、この補助椅子は脱着式ですので、他の自転車、バイクや自動車などに衝突した場合、容易に外れてしまうことが想像されます。私はまだ実物を目にしたことがないのですが、新聞記事の写真を見る限りかなり簡素な構造で、日本で使われている(自転車に固定された)補助椅子に比べ、安全性は大きく劣るように思われます。

レンタサイクルの運営会社は、早速声明を発表し、「補助椅子の使用は自転車の使用規定に違反しており、事故発生時の責任は全て使用者が負うことになる」と述べ、使用を控えるよう求めています。
また、一部の会社は、路上で自転車の整理や、需要状況に応じた再配置を行う作業員が、補助椅子の使用者を発見した場合に使用の中止を求め、使用者が応じない場合には警察に通報すると発表しています。
さらに別の会社は、ネット通販の運営業者に、該当商品の販売中止を求めて協議を行っているそうです。

中国では、道路交通に関する法規則は、原則的に各地方政府が定めています。例えば北京では、18歳以上の成人が自転車に乗る場合、固定式の補助椅子を使用して12歳以下の子供を乗せることができます。
交通ルールに詳しい弁護士は、レンタサイクルに使用する補助椅子は「固定式」とは言えず、北京や同様のルールを定めている市の規則に違反していると指摘しています。また、同弁護士は、事故が発生した場合に、レンタサイクルの運営業者、補助椅子のメーカーや通販業者が損害賠償責任を課せられる可能性があると述べています。
もちろん、第一義的に責任を負うべきなのは、補助椅子の使用者(多くは親)なのですが。

本年3月に、上海でレンタサイクルに乗った11歳の少年がバスにはねられ死亡する事故が起きたことから、各運営会社はレンタサイクルの利用に「12歳以上」との条件を課し、事故防止に努めています。
それでも、利用者の意識の低さや、「金儲け第一主義」の業者の横行にはなかなか太刀打ちできないのが現状のようです。この補助椅子などは、完全な「ニッチ商品」なのですが、人口の多い中国ではそのニッチが巨大で、あっと驚くようなビジネスも成立してしまいます。
法規制やルールの徹底も重要ですが、結局は社会規範、市民の意識の向上を待つ以外に無いのでしょう。

レンタサイクルの補助椅子のニュースから、中国のダイナミズムと社会が抱える問題が垣間見えるように思えます。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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