第279回 ヘッジファンドの45日ルール【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第279回 ヘッジファンドの45日ルール【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ヘッジファンドの45日ルールをご存知でしょうか。リスク資産が下がりやすい時期として意識されるのですが、特に例年10月15日は意識されやすい時期。一体何が起こるのでしょうか。

ヘッジファンドに運用を委託している顧客(富裕層)は、ファンド運用を解約する場合は決算日の45日前までに申し出なければならないというルールが存在します。解約の申し入れがあれば、ヘッジファンドは運用資産を取り崩して(ポジションを決済する必要にせまられる)顧客に返金しなくてはなりません。

海外のヘッジファンドはまとまった資金を効率的に運用するために、少数の大口の出資者に限定した資金(私募)で運用されるものが多く、解約できるタイミングが制限されています。多くは3ヶ月に1回、中には半年に1回だけというところも。決まった時期にしか解約することができないため、同じタイミングに解約申し入れが集中することがあるのです。

どんな時に解約申し入れが増加するのでしょうか。ヘッジファンドの運用成績に満足であれば解約しようとは思いませんね。ヘッジファンドの運用成績が振るわず、先行きも期待できないと不安がある場合ということになるでしょう。そのため、ヘッジファンドの運用成績が重要となってきます。成績が振るわないヘッジファンドは決算日45日前の期限が近づくにつれて顧客から解約の申し入れが相次ぐため、ヘッジファンド側は、解約に伴い顧客にキャッシュを返さなくてはならないため、運用しているポジションの決済を迫られます。これが「45日ルール」に伴うファンド売りによる下落リスクなのです。

ヘッジファンドの実態は正確な把握が難しいのですが、欧米のヘッジファンドは4半期決算であることが多いようです。3月、6月、9月、12月ですね。しかしながら、決算が年2回のところだと、6月と12月の末日となります。6月末日から45日前は5月15日、セルインメイが意識されるのは、実はこのヘッジファンドの決算が影響しているとの指摘も。一方で米系金融機関やヘッジファンドは12月はクリスマス休暇にはいることから11月決算が多く存在します。11月末締めのヘッジファンドの45日前は10月15日となります。これが10月にリスク資産が下がりやすい一因かもしれません。

2016年はヘッジファンドの運用成績が悪かったため、解約が増加し、ヘッジファンドから巨額の資金流出があったことが報じられていますが、2017年は世界のヘッジファンドの運用成績が回復しており、ヘッジファンドへは資金の流入が続いています。現時点において、顧客らがヘッジファンドに対して解約の申し入れをする地合にあるようには見えませんので、今年は大きな波乱はないように思います。

それでももし、解約申し入れが増えてヘッジファンドのポジション調整が大きくなるような局面があるとするならば、ポジションが積みあがっているアセットに注意が必要でしょうか。個人的に気になっているのは米ドルの巻き返し。9月19日までの週の最新のIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組は、ドルの売り越し額が5週間連続で増加し、2013年1月以来の高水準となっています。2017年1月から下落が続いている米ドル。売りが膨らんでいるため、ポジション整理が起きれば買戻しからのドル高が誘引される可能性があると言えるでしょう。年内の追加利上げ思惑が再浮上したことで、米金利が反転上昇しており、米ドル売りのポジション整理が起きやすい地合いとなってきました。年末に向けてはドル高基調が強まるのではないでしょうか。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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