第237回 宅配業者に料金値上げの動き 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第237回 宅配業者に料金値上げの動き 【北京駐在員事務所から】

10月11日付の本コラム( 第234回)で、11月11日「独身者の日」のネット通販会社の大セールに向け、通販業者や宅配業者が準備を進めているという話題をご報告しました。
日本では、ネット通販の利用増で、宅配業者の取扱件数が増加し、配送員の不足や過重労働が社会問題となりました。未払残業代の精算などにより人件費が増加したヤマト運輸が、配送料金の値上げを行い、他の大手も追随するなど、大きな影響が生じています。

中国では、郵便の信頼性が低く、ビジネス関係の契約書、請求書や領収証なども、民間の宅配業者に配送を依頼することが一般的です。
加えて、日本以上のネット通販の急成長により、取扱件数が急増しています。中国では、日本に比べると、人員の確保が容易なようですが、転職も頻繁ですので、宅配業者各社にはそれなりの苦労があるようです。

このほど、大手宅配業者の中通と韻達の2社が、相次ぎ配送料金の値上げを発表しました。10月中に実施とのことです。
両社は、配送員の人件費増加に加え、梱包資材の価格上昇や、燃料など物流にかかるコストの上昇を、料金引上げの理由としています。
中国には、上記2社を含め、株式を上場している大手の宅配業者が6社あるのですが、今のところ他の業者には追随する動きは無いとのことです。
物流業界に詳しいアナリストは、コスト増に加え、宅配業者に対し、消費者がより質の高いサービスを要求するようになっているとして、今後も値上げの動きが続くと予想しています。あわせて、宅配業界は安定しており、各社はコスト増を適切に料金に転嫁し、価格競争は起こらないと指摘しています。

北京市内にある中通の配送拠点に勤務する配送員は、「料金の値上げについては知らされていない」と話しています。両社は顧客に対し、「値上げの詳細については、最寄りの配送拠点に照会して欲しい」と説明しているそうで、当面は混乱が避けられないものと見られます。
「独身者の日」まで二週間を切っていますので、中通、韻達の両社には、顧客への情報提供、周知徹底を図ることが求められます。

当事務所でも、契約書の送付などのため、宅配業者を頻繁に利用しています。日本郵便やヤマト運輸が、ネットで荷物の配送状況を確認できる追跡サービスを提供していますが、こちらでは配送担当者の氏名と携帯電話番号まで表示されますので、状況により担当者と直接やりとりができ、大変便利です。
また、北京市内ですと当日中の配送も普通に行われており、迅速性は高く評価できます。加えて、賃金水準の差が大きいものと思われますが、日本よりも料金がかなり安いので、大変ありがたいです。
それでも、業者の信頼性には若干の差があり、当事務所でも市内宛のものは料金の安い業者に、一方上海行き等遠距離のものについては、料金が多少高いものの、信頼性に定評のある業者にそれぞれ委託するなど、使い分けをしています。
国土が広く、労働力も豊富で、かつ政府がネット通販事業を強力に後押ししていることなど、事業環境は良好です。宅配各社は今後も成長を続けることが見込まれます。

中国の宅配業界の現状が、日本と重なって見える話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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