マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
昨年後半より中国の都市部で急速に普及し、人気を博しているレンタサイクルですが、業者の乱立により自転車の供給過剰に陥り、地下鉄駅やバスターミナルの周辺に乗り捨てられた自転車が歩行者の通行の障害となるなど、問題が噴出しています。
日本の放置自転車問題と同様の状況です。
業界団体の推計では、本年2017年末の時点で、全国でサービスに供される自転車は2,000万台に達する見込みで、昨年末から10倍の伸びとなるそうです。
自転車の放置は、そもそもそのような利用が想定されているため、本来問題とはならないはずなのですが、台数が多すぎるため、深刻な状況が生じています。
加えて、これもある程度想定されたものなのでしょうが、自転車への破壊行為も頻発しており、サドルがない、車体が壊された、あるいはタイヤがパンクしたなどにより使用できなくなった自転車が、街のあちこちに打ち棄てられています。
壊れた自転車の修理や部品の交換には、平均で1,000元(約17,000円)を要するのに対し、新品の自転車の価格は740元(約12,600円)だそうで、「直すより新品に置き換える方が割安」となっています。
そのため、事業者は自転車の回収、修理と再利用には消極的で、「壊れた自転車の資源としてのリサイクル」が課題となっています。
問題の多発を受け、各地方政府は法制度を改め、各事業者への締め付けを強めています。
例えば、北京市政府は事業者に対し、「供用から3年を経過した自転車は廃棄処分とする」ことを求め、あわせて自転車の修理や再配置のための人員の確保を義務付けています。自社で十分な人員を確保できない場合には、他の業者への委託も可としています。
また、壊れた自転車のリサイクルについては、大手の事業者であるMobikeとofoの二社が、このほど相次いでリサイクル業者と協定を結び、修理の上で再利用する、あるいは金属部品等を資源としてリサイクルするとしています。このような形が他の事業者にも広がることが期待されます。
上海の有力大学である同済大学で、都市化に関する研究を行っている教授は、レンタサイクル事業者各社に対し、サービスの提供にとどまらず、自転車の製造、供用とリサイクルにまで責任を負うべきと指摘し、そのような事業者の姿勢が、真のシェアエコノミーの実現につながると述べています。
あわせて、サービスに供される自転車につき、過度のコスト削減に走ることを戒め、耐久性を高めるよう求めています。
レンタサイクルを巡る様々な問題については、利用者側のモラルに原因の多くがあるように思えてならないのですが、これを急速に向上させることは現実的でなく、まずは事業者側に様々な規制あるいは義務を課すことで、事態の改善を図る方針です。
レンタサイクルのサービスが中国で根付き、高い評価を得ることができるか、早くも正念場に差し掛かっているように思います。
北京の街中では、このところ大手事業者のトラックやリヤカーが、自転車を山積みにして走っている光景が目につきます。
市政府の要請を受け、壊れた自転車の回収と、供給過剰のエリアから不足のエリアへの再配置を行っているものと思われます。
自転車のレンタル料は激安ですので、作業員の人件費などを考えると、事業の採算性に疑問符がつくところです。今後、中小の事業者の淘汰が起き、大手による寡占が進むように思われてなりません。
Mobikeが札幌でサービスを始めるなど、大手各社は海外への展開を進めていますが、まずは
本国で事業を確立させることができるのか、来年は勝負の年になりそうな気がします。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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