第114回 「AIスピーカー」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第114回 「AIスピーカー」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。10月は絶好調であった株式市場も、11月上旬に日経平均で26年ぶりの高値にヒットしてからは、調整色が増すようになりました。それまでの上昇が急だったことから日柄調整はあって当然なのですが、直近は6日続落といった局面もあり、市場のセンチメントは明らかに慎重になっているような印象です。「宴の後」といった感じでしょうか。そこに、商品市況の下落、米国税制の変更観測、中東の地政学リスク、そして朝鮮半島リスクといったあまり芳しくないマクロ要因も揃ってきました。このまま失速するのか、踏みとどまって根固めとなるのか、相場は分岐点に差し掛かってきたように思います。

さて、今回は「AIスピーカー」をテーマに採り上げてみましょう。AIスピーカー(スマートスピーカーと呼ばれることもあります)とは、AIなどの人工知能を搭載したスピーカーです。一般に連想される「スピーカー」は音楽や音声を一方的に流す装置という位置づけですがAIスピーカーはIoTなどの通信機能を備え、対話も可能である点がこれまでのスピーカーとは決定的に異なります。したがって、「スピーカー」というよりもむしろ、AIによってより高度な対応を可能としたスマホ、と理解した方がよいかもしれません。先行している米国では2017年中に累積販売台数が3,000万台に到達するとの報告もあり、1世帯に1台と単純に考えれば、米国の4世帯に1世帯はAIスピーカーを導入している計算になります。少なくとも、急ピッチで消費者に浸透しつつあるということは云えそうです。日本でも今秋より幾つかの企業がAIスピーカーの発売を決めています。

AIスピーカーの面白いところは、AIによって双方向対話ができるところでしょう。こちら側の要望を聴き、それに柔軟に対応したサービスを提供するため、利用者にとっても飽きが来ない仕組みとなっています。かつて描かれた未来社会のように、AIスピーカーに向かって話しかけるだけで、欲しい情報や対応が期待できるシロモノと云えるかもしれません。質問への回答や音楽再生、ニュースのピックアップ、スケジュール管理、といったすぐに思いつくサービスも、AIによって利用者の好みに合わせた対応が可能となるはずです。日本でどこまで消費者に浸透するかはまだわかりませんが、いつのまにかスマホやネット通販が生活に浸透したように、便利で快適との評価となれば、家庭においても存在感のある機器となるのではないか、と予想します。本コラムでは、ある程度市場に浸透することを前提として、株式市場への影響を考えてみましょう。

当然、一定の市場規模が見込まれるとすれば、AIスピーカーを作っているメーカーにそのメリットが発生します。まずはAIスピーカーメーカーが株式市場の注目を集めることになるでしょう。もちろん、AIスピーカーに使用される部品も同様です。ここまではスマホなど一般の電子機器と同じ展開と言えます。しかし、筆者は利用者と対話したAIスピーカーが蓄積するであろう大量のデータの方に興味を持ちます。そのビッグデータをAIで処理すれば、消費者ニーズに対応した新たなサービスの構築に先手が打てるため、です。AIに自分のニーズを先回りされるのはちょっと癪ですが、一々言わなくとも心地よいサービスをしてくれるのではあれば、やはり利用者はメリットを感じることでしょう。それに伴い、株式市場はビッグデータの解析やAIというスキルを持つ企業にスポットライトを当てるというシナリオが考えられます。現時点ではまだ、日本企業によるAIスピーカーの供給は限定的なようですが、今後市場が広がっていけば、日本ユーザーの嗜好にマッチした製品が日本企業から出て来ると予想します。

かつてスマホが世に出てきた時、多くの人は「ネット機能の充実した携帯電話」といった捉え方をしたのではないかと考えます。しかし、現実には、「電話機能を有した携帯型データ送受信端末」とも表現できるシロモノへと利用者の認識は変わっていきました。その間、多くのアプリやゲームが開発され(それらの企業は株式市場の注目も集めています)、スマホは「電話」からそういった便利なツールを利用できる「インフラツール」へと変貌したといってよいでしょう。果たして、こういった変貌をスマホ登場時に予測できた人はどれだけいたでしょうか。AIスピーカーも、今のところは「AI機能が加わったスマホ」といった捉え方しかできないのが実状ですが、スマホと同様、数年後には別のモノへと変貌しているかもしれません。そして、その過程で面白いサービスを供給する様々な企業が輩出されると予想します。AIスピーカーは、そういった可能性を感じさせるアイテムとして、是非とも注目したいところです。

コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)

日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。

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