世界最大級の運用資産規模を誇る投資信託会社、バンガードがお届けする運用コラム。世界経済を大局的にとらえ、正しい運用のあり方を示唆します。(現在は更新しておりません)
ある特定の市場が特に高い投資効率を上げているとき、投資家の中には、長期的な投資計画を無視して、それらの市場に資金を集中させ、手っ取り早くリターンを稼ごうとする人がいます。
例えば米国では、ここ2、3年に市場の動きに敏感に反応して株式投資をやめ、インフレ連動債やハイ・イールド債に極端に投資を集中させた投資家がいました。あるいは、当時パフォーマンスが良好だったREIT(不動産投資信託)やエマージング(新興)市場に資産の多くを移した投資家もいたようです。
さて、こうした投資家はこの期間中、大きなリターンを得られたのでしょうか?残念ながら結果として言えることは、「ほとんど不可能」だったということです。市場は周期的な動きをする傾向がありますが、それでもある一定期間内にどのようなパフォーマンスを生み出すかを確実に予想することはできません。上手な投資に欠かせないことは、いろいろな株式や債券をバランスよく保有したポートフォリオを持ち、なぜその金融商品に投資するのかをよく理解した上で、それに投資し続けることでしょう。
「ほとんど不可能だった」理由を上記に例示した4つの資産クラスについて考えてみましょう。これらはいずれも米国で2003年に注目されたものの、金融環境や政治情勢の影響受けて、現在はかつてほどの勢いが見られない資産クラスです。
インフレ連動債(TIPS)
インフレ連動債は元本や利子がインフレ率に比例して増加する債券です。1997年に米国政府が発行したものが最初で、比較的歴史の浅い資産クラスです。前回の株式の下げ相場において、特にTIPSを多く組入れたファンドは2004年の3月まで良好なリターンを出し続けました。
ファンド評価会社のリッパー社によれば、米国のインフレ連動債ファンドの年率平均リターンは、過去3年間では8.7%、過去5年間ではほぼ9%でしたが、今年4月に入ると平均で4.6%以上下落してしまいました(ドルベース)。このことは、2002年、2003年にインフレ連動債を大量に購入した短期保有の投資家にとっては大きな衝撃だったかもしれません。しかし、これらの動きはある程度予想されたものであったため、長期投資家には驚きではなかったはずです。
ハイ・イールド債
ハイ・イールド債は「ジャンク債」あるいは「非適格債」として知られており、ベンチャー企業などの比較的歴史の浅い会社や、財務信用力の低い会社によって発行されます。ハイ・イールド債に投資する際の最も大きなリスクは、債券を発行した企業や団体が約束した時期に、約束通りのクーポンや元本を払えなくなることです。その代わり、ハイ・イールド債は投資適格債や米国財務省債などの高い信用力の債券と比較して、運用利回りの条件がより高く設定されています。
リーマン・ハイ・イールド・インデックスによれば、ハイ・イールド債の2003年のトータル・リターンは28.97%で、投資家の高い需要によって、債券価格はより上昇しました。しかし、その後、2004年の1月から3月にかけて下落し始め、4月と5月にはマイナスまで落ち込んでしまいました。その結果、6月30日の時点では、年初からの累積リターンはわずか1.36%まで下がっています。ハイ・イールド債が最もよかった時期に投資しはじめた多くの短期保有目的の投資家にとっては期待はずれの結果となってしまったのです。
ハイ・イールド債は、今年に入ってからの低いリターンで投資家の需要が減少したことに加えて、債券市場、特に米国財務証券利回りの上昇に影響を受けたものと考えられます。
次回はREIT市場とエマージング市場について見てみます。
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