パフォーマンス・チェイサーが経験した手痛い教訓(後半)

世界最大級の運用資産規模を誇る投資信託会社、バンガードがお届けする運用コラム。世界経済を大局的にとらえ、正しい運用のあり方を示唆します。(現在は更新しておりません)

パフォーマンス・チェイサーが経験した手痛い教訓(後半)

 ある特定の市場が特に高い投資効率を上げているとき、その市場に資金を集中させ、手っ取り早くリターンを稼ぐ。-前回のコラムでは、この方法がいかに難しいかを示す具体例として、インフレ連動債、ハイ・イールド債の動きを振り返ってみました。今回は米国REIT市場とエマージング市場についてみてみます。

REIT(不動産投資信託)

 REITとは、投資家から集めた資金で不動産を購入し、賃貸収益や売却益をその投資家に分配するものです。REITへの投資はここ数年好調で、2003年のトータル・リターンは36.7%(ドルベース)でした。モルガン・スタンレーREITインデックスによれば、2004年の1月-3月のトータル・リターンは12.05%と、その傾向は衰えていませんでした。

 しかし、2004年4月に状況は急変しています。モルガン・スタンレーREITインデックスよると、REITのトータル・リターンは4月に14.8%下落しました。6月末までには少し回復しましたが、2004年の年初からの累積リターンはわずか5.19%です。2003年当時のREITの全盛期に購入して手っ取り早い利益を期待していた米国の投資家にとっては不満足な結果となったのではないでしょうか。

 今回のREIT市場の変化を招いた要因は次のようなものと考えられます。 2003年の高いリターンに惹かれて市場に参入した短期保有目的の投資家は、インフレ率と金利の上昇予想がREITにとってはマイナスの要因であると考えました。REIT市場は小規模で、ウィルシャー5000インデックスでは米国の普通株式市場全体のわずか2%にしかなりません。このため少数の投資家の投資活動が市場全体の方向に極端に影響を及ぼす可能性があります。REITの価格は、組入れ不動産の価値と比較して、非常に高いプレミアがつけられていたのです。債券利回りの上昇が原因で、REITを株式や債券と比較したときに投資家が優位性を見出せなくなったと考えられます。また、通常REITファンドからの配当は米国の現行の税制下では、より高い税率で課税されるため、REITへの投資は不利だと感じた投資家もいたでしょう。
エマージング(新興)市場

 「エマージング市場」とは、アジア、アフリカ、環太平洋地域、中東、東ヨーロッパ、ラテンアメリカとなどの新興諸国の市場を指しています。
 MSCIエマージング・マーケット・インデックスによると、これらの市場は2003年には56.3%という驚異的なリターンを記録し、続く2004年の1月-3月には9.7%のリターンを出しました。しかし、次の四半期で急速に落ち込み、6月末時点での年初からの累積リターンは-0.78%になりました。

 エマージング市場はかなり不安定で、ダウ・ジョーンズ工業株価平均やウィルシャー5000インデックスと比較すると、エマージング市場の変動幅は米国市場の約2倍です。エマージング市場はインフレ、金利の上昇、石油価格の高騰など米国市場と同じ諸要因に影響を受けますが、その他にも様々な要因で変動します。エマージング市場の多くの国々では、その経済成長に寄与する少数産業の比重が大きく、従って市場の動きも不安定です。さらに、政治、経済、金融情勢などにより影響を受けやすいというリスクがあります。

 では、2003年に小規模な市場に投資し、予想外の不満足な結果しか得ることができなかった投資家はどうすればいいのでしょうか? バンガードからのアドバイスは非常にシンプルです。1.長期的な投資をしましょう 2.現実的に考えましょう 3.投資計画を持ちましょう、これだけです。一時的な市場の動きに感情的に反応し、短期的なパフォーマンスを求めてポートフォリオを「切り売り」してしまうようなことは避けるべきです。一般的に、投資計画を大きく変更するのは、市場の変動ではなく、ライフスタイルが大きく変わった時だと考えるべきでしょう。

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