優しい気持ちでいるための
身の置き方AOI／プロトラベラー^®

良い環境で過ごしたいから
ゴミを片付ける

2015年からプロトラベラー^®として活動しているAOIさんは、旅の素晴らしさを写真や動画で表現し、多くの人たちに届けることを生業としている。具体的には、地方自治体や航空会社から依頼を受けて、写真や動画を撮影しSNSなどで発信。今までさまざまな国内外を訪れてみて、海や山、自然があるところが自分らしくいられる場所なのだと実感した。

「海や川に入る時には、きれいで心地よい気分でいたいんです。世界中の環境問題は意識していますし、ゴミを拾っていると、えらいねと言われることもあります。でもそれらには少し違和感があって、ただ自分は綺麗な場所を楽しみたいので片付けているだけなんです。気持ちが良い環境に身を置くと自然体を引き出してくれるというか、優しい気持ちになれますよね」

東京と高知の二拠点ライフから
見えてきたもの

海外や国内を自由に移動することが限られてしまった現在は、東京と、祖父母のいる高知を行き来する二拠点生活を送っている。忙しなく国内外を移動し続けてきたAOIさんにとって、じっと留まる暮らしにはこれまでにはない時間と気付きがあったという。

「これまで常に移動して突き進んできたので、日本にいるのは1ヶ月の内、数日あるかないかでしたそれが世界中のパンデミックの影響によって移動が制限されてしまったんです。でもそれによってじっくり物事を考えたり、新しい目標を立てられる良い機会になりました。ビルに囲まれた東京に住んでいると、情報も多く、周囲と自分とをつい比べてしまったりして焦る気持ちになってしまうこともあります。でも高知では、山、川、海の豊かな自然のなかに身を置けて、そこで暮らす人々もみんなどこか自分らしく過ごしている。私自身も太陽とともに起きて、暦の移り変わりを感じながら、気が向くままにカメラを持って出掛け、お天気が良ければ川沿いで写真や映像の編集をする生活。暮らしがいつも自然と隣り合わせで、家の脇に流れる用水路から川へと生活用水が流れていくのも見えるんです。その日常風景によって、自然由来の物を意識的に使うようになりました。高知は自然に恵まれていますから、ぐるぐるした頭が解き放たれるんですよ。ぼーっとしているだけで満たされていくというか、心と身体が浄化するような。自分に余裕ができると新しいアイディアが生まれるので、それが仕事に繋がるきっかけにもなりますし。私の仕事はありがたいことに電波があればできるので、都会のパワーと、高知の自然とのオンオフが心地よかったりします」

自分が満たされるために何が大切か

ゆっくりと家族と過ごす時間や、自然に身を置いて心が豊かになると、人生において幸せな要素とは、物や形ではない、愛情がいかに大切かを知るきっかけにもなったそうだ。

「お金はもちろん必要ですし、自分の好きなことを仕事にした対価だと思います。でも、そこに至るプロセスや続けていくモチベーションを保つことも大切だなって最近は感じるんです。最近よく言われているようなLess is moreじゃないですけれど、何でもありすぎることが幸せだとは限らない。近所のおばあさんが作ったお野菜をもらって料理を作ったり、何気ない日常の中で、偶然や人との出会いの中で生まれる幸せに満たされています。なるようになれと楽しんでる感じが心地よくて。そもそも私は貪欲なタイプではなく、古着屋で何百円の服を買ったり、家族でリサイクルショップを巡ったり、自分も着なくなった服は譲ったり、そういうことを楽しんでいた気がします。昔から旅に行くためにバイトして貯金するのが趣味だったので、金額の高い物といえば、カメラやパソコンを買ったことでしょうか。結果的にそれが新しい仕事にも繋がったので、今思えばそれも投資だったのだと思います」

プロトラベラー^®として、数々の旅やその記録、そして現在の二拠点生活も、すべてがAOIさんにとっては自己投資になっている。どこへ滞在しどんな時間を過ごしてきたのか。そこでの体験の蓄積こそが、財産なのだ。

「振り返ってみると、海外では日本の常識はもちろん通用しないし、多様な生き方を見てきたので、いろんなことに柔軟になれました。その経験のおかげで、今の私ができたのかもしれません。以前から自然のある場所を旅先として選ぶことが多かったのですが、それはこれからもきっと変わらない。旅すること、生きていくことに対して無理せずにモチベーションを保っていく、それが結果的にお金にも繋がっていくようになりました。そして、私は意識して自然の多い場所にいたいんです。そうすることで、目の前の風景を守りたいという気持ちが自ずと生まれ、主体的なアクションになる。今の私の小さな夢は、旅で出会った海外のアーティストやミュージシャンの友達を日本に呼んで、小さな森の音楽祭をすること。多くの人が自然との距離を縮めてくれれば、それが環境を守る一歩になると思うので」