’21年、プレミアムな自然体験をアテンドするトップガイドと、主に海外の富裕層ユーザーをマッチングさせるポータルサイト・Kammui(カムイ)を立ち上げたマックス・マッキーさん。父親がイギリス人で母親が日本人、海外と日本のどちらの視点も持つ彼だからこそ、海外から日本を訪れる人たちに何が魅力的に映るのか、理解が深い。
「ニセコのスキー、スノーボードが有名になりましたが、宮崎や奄美大島にいい波がきてサーフィンができるとか、ほとんど知られてないんですよね。日本の自然が興味深いのは、スピリチュアリティ(精神性)と結びついているところで、そこに日本人さえも気づいていないのがもったいないんですよ。そして、現地で暮らしている人のほうが、地元の魅力に気づかないことって多くて、じゃあ僕がイギリスでどんなすごい旅をしたのかと聞かれると、大したことはしていないんですけどね(笑)。Kammuiではそうした日本のオリジンに触れるような、たとえば、九州の霧島でなかなかアクセスできない神道の儀式が体験でき、火山でハイキングをして、焼酎の蒸留所を巡るといった、日本のオリジンに触れられる体験をキュレーションし、提供しています」
最終的にはビジネスで地方創生を
自身が現地に足を運び、そこにあるコミュニティと交流することを大切にしている。
「現地に行くのは、その体験がインバウンドの外国人にフィットするのか、そしてどんな価格で提供するのか、確認する意味があります。日本人はもったいないことに、その素晴らしい価値にふさわしい価格よりも安くしてしまう傾向があるんです。そして、Kammuiの活動が最終的にはそれぞれのローカルの経済にバリューをもたらせなければいけないと思っています。地方でも生活できる経済的基盤が地元にあれば、若者が東京から戻ってくる理由にもなりますしね」
日本でもスタートアップがそう珍しくなくなってきた。それでも、スタートアップ企業が新規参入して結果を出すのは難しく、マッキーさんから見ると構造的な閉塞感があるようだ。
「もう少し、日本のマーケットがオープンに、ダイナミックになるといいですよね。大企業によってマーケットが独占されているから、起業しても結局その会社を売却しなければならず、何も変わらない状態が続いています。変わらないのが日本のよさでもありますが、停滞する日本経済をよくするためにも、海外の会社が入りやすくするとか、若い会社が成長できるように公的投資をするとか、変わったほうがいい面もあると思います」
瞑想や運動で仕事とのバランスを取る
スタートアップ企業の代表として、投資家とのやり取りやチームのマネージメントからマーケティング、旅のキュレーションにかかわる部分まで、携わる業務は多岐にわたる。ハードワークの中で大切にしているのは「バランス」だ。
「早朝から夜11時まで働くこともありますし、仕事をする時間が長くなりがちではあるんですけど、週末にDJをしたり、群馬の水上の自然に身を置いたり、仕事とプライベートのバランスを取ることは意識していますね。水上はKammuiのインスピレーションとなった土地で、月に1,2回行くと、スマホを見ない時間も作れますし、プチリトリートができます」
起床は4時や5時と早い。そして、10分の瞑想から一日を始める。〝今 〟にフォーカスできることがいいという。
「以前は過去や未来のことを考えすぎていたんですけど、頭の中であれこれ考えても仕方がないんですよね。結局は、〝今〟に戻らなきゃいけない。〝今〟しかリアルではないので。瞑想の後は、3時間くらい仕事に集中して、その後に運動をしますね。ボクシングか水泳かランニングか、何かしらして健康を保つようにしています。あとハマっているのが昼寝です。30分くらいで収めたいんですけど、本当に疲れている時は1時間寝ることもありますね」
お金は本当にやりたいことを
実現させるツール
Kammuiを立ち上げる前は、国際弁護士として活躍していた。その時代の蓄えが、今、そして未来を自由に生きるための礎となっている。
「法律事務所がファイナンシャルアドバイザーを用意してくれて、少しずつでも投資していけば20年、30年後にまとまった額になっていくことを教わりましたし、ビジネススクールにも通っていたので、投資による将来設計は人より早く学べたと思います。だから、今、本当に自分が好きなことにチャレンジできています。僕には給料が出なくても(笑)。それは冗談にせよ、実現したいことを実現しやすくするためのツールがお金で、リタイアしたい時にできるのも、投資をしてきたからです」
3年前の起業当初から事業でブロックチェーンを活用することを考え、ビットコインについても勉強してきた。
「サブスクライバーとしてプロフェッショナル用のコンテンツを見たり、いろいろ勉強して、投資を始めたらものすごい上がったんです。でも、家族や友達にも伝えたくても難しいんですよね。ビットコインは乱高下が激しくて、半年とか短期間で見ると怖気づいてしまう人が多いですから。やっぱり投資は、自分が信じるところが一番大切だと思うんです。ビットコインはコンセプトにパンクを感じて、なんだか好きだったんですよね。当然、リターンを得るための投資でもあるんですけど、自分が好きで信じられることをサポートしたいです。ただ、どこまでデジタルの世界が進化しても、一番ラグジュアリーなことは、自然での体験。どれだけ時代が変わっても、絶対に残っていくものだと思います」
Max Mackee
(マックス・マッキー)
東京を拠点に活動する⽇系英国⼈弁護士、起業家。2021年に株式会社Kammui(カムイ)を設⽴。より多くの⼈々と⾃然をつなげることを⽀援するデジタルプラットフォーム〈Kammui(カムイ)〉をロンチさせる。バックカントリースノーボードとDJを愛し、日本のカルチャーを海外に発信していく事に情熱を注いでいる。
Instagram: @max_mackee