1998年の思い出
月曜火曜はマスターカードの取締役会に出席するために(私は社外取締役です)、ニューヨーク郊外に来ています。今回泊まったホテルは、思い掛けず個人的にとても懐かしい場所のすぐ隣でした。その場所とは、かつてLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)があったビルです。
LTCMとは、ドリーム・チームと云われた運用会社で、世界中の尊敬を集め、ノーベル賞受賞者を輩出し、そして崩壊していった、伝説の会社です。LTCMはソロモンブラザーズの上司と大先輩たちが作った夢のチームでしたが、私は何故か可愛がってもらい、ゴールドマン時代に、もしかしたらゴールドマンの誰よりも近しく付き合い、ニューヨーク出張時によく足を延ばして訪問したものでした。
一番記憶に残っているのは、私がマネックスを創業するためにゴールドマンを辞めようと悩んでいる時に(ちょうどその頃はLTCMは世界中の金融機関や中央銀行を巻き込んだ崩壊劇の最中(1998年9月)だったのですが)このビルを訪れた時のことです。ゴールドマンはその当時、或る意味でLTCMと敵対(この言葉を使うのが正しいかは難しいところですが)しており、そのゴールドマン側の主語たちと私は仕事上とても近く、しかし私はあくまでも友人としてLTCMが心配で、LTCMの人たちとお互いによく電話で話していたのでした。その流れで、訪問することになったのでしょう。
するとかつての直接の上司は、オフィス内で私と個人的な話をすることをはばかり、地下の駐車場に連れて行って彼の車の中で、なんと私のことを心配して、親身にキャリア相談をしてくれたのでした。長い時間ではありませんでした。目を盗んでの会話のようなものです。とてつもなく大変な時期であったであろうに、かつての部下のことを気に掛けてくれたのです。今思い出しても、言い尽くせないほどありがたく、感謝の気持ちでいっぱいになります。
あぁ、私ももっと大人にならなければいけないな。もっと成長しなければ。そんなことを今日思いました。ビルがちょっと古くなってしまったのが、寂しい気持ちを誘いました。頑張ろう!
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