お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
株式投資で大儲けをしても、長期運用で高利回りを達成しても、資産設計としては大失敗ということがある。人生での大きな買い物で失敗した場合だ。
その最たるものが「住宅」だ。仕事柄、これまで多くの失敗例を見てきた。数千万円もの買い物なので、買った後は誰もが(はた目には明らかに失敗でも)「買ってよかった」と思い込んでいる(無理もないけど)。だから、住宅専門誌などで「私たち、こうやって家を買って大満足です」という記事を読んでも、その内容を真に受けてはいけないのである。
● 「買うべきか、買わざるべきか」より「買いたいか、買いたくないか」最近は賃貸派が増え「一生に一度は家を買うもの」という意識が薄らいできたのはいいことだ。持ち家にも賃貸にも一長一短があるので、それぞれの長短を知った上で、どっちにするかを決めればいい。
家(=資産)を持つと、次のようなよいことがある。
・自分の好きな住み方ができ、「住」の質を高められる(女性には高得点)。・社会的信用、ステータスが高まる。
・インフレの時に資産を保全しやすい。
・精神的満足感が得られる。
・老後の資産設計がやりやすくなる(貯蓄等の準備額が家賃分少なくてすむ)
逆に家を持つことで生まれるリスクも、もちろんある。
・購入にあたって多額の資金が固定され、資産の流動性が低くなる。
・粗悪物件をつかまされる危険がある。
・景気悪化、周りの環境の悪化で、資産価値が大幅に低くなる危険がある。・簡単に現金化できず、気軽に住まいを変わるという自由を失う。
・資金設計を間違うと(ローン借過ぎ等)、生活が破綻する危険がある。・火事、地震などのリスクを抱えることになる(特に地震は保険を使っても損害を半分までしかカバーできない)。
家を持つことで精神的な充足感を得られる人や、インフレに備えたい人は、家を買うことを人生の目的に入れればいいし、何にも縛られたくない人やデフレ基調が変わらないと思う人は賃貸がいいということになる。
● こんな買い方は失敗する
あなたが「いつか家を買う」ということを選んだら、大切なのは買い方で失敗しないことだ。以下5か条にまとめてみた。
1.外部要因で買わない
いつ買うか、どんな物件を買うかというのは、内部要因(家族構成、働き方、収入、貯蓄)で決めなくてはいけない。外部要因(金利、不動産価格、税制)を、重視しすぎるのは間違い。頭金は貯まってないけど金利が安いから、結婚したばかりでライフプランは流動的だけど優遇税制があるから、という理由で買った人たちは、十中八九失敗に終わっている。
2.モデルルーム1件目で買わない
若いカップルに多いのがこれ。興味半分でモデルルーム見学に行って、美しい内装とおしゃれな家具に目を奪われてると、営業担当者がローンの金額を計算してくれる。「あら、家賃と変わらない」ということで、すぐに契約してしまうケース。立地やマンションの規模、管理状況など肝心なことを見ていないだけでなく、むちゃくちゃな資金設計の場合が多く、後で泣きをみる。
3.友達が買ったから、という理由で買わない
会社の同僚、アパートの隣の人が買ったから、私も買えるはずと買うのはよくない。収入が同じくらいでも、貯蓄や生活設計は全く違う。あくまでも自分のケースで考えるべき。見栄で買い物すると結局は大損することになる。
4.老後の不安から家を買わない
何かの不安から逃れようとして行動すると裏目に出やすい。「不安」は判断力を鈍らせるからだ。老後の不安から家を買おうとするときなど、特に気をつけたい。「家さえあれば安心」と家を持つリスクに気が回らなかったり、「ここが終のすみかよ」と、不動産を買うときの鉄則「売りやすい物件を買う」から外れてしまったりする。気をつけて!
5.返済を甘く見ない
多くの住宅ローン破産者が出現しているが、最大の原因は甘いローン計画だ。「借りられる」ときちんと「返済できる」は同義ではない。不動産が値下がりしても、金利が上がっても、収入が多少減っても、もとのローン計画が健全なら大きなダメージを受けることはない。資金計画には心を決めてかかりたい。
次回は「上手な家の買い方」に進みます
(ファイナンシャル・プランナー 中村 芳子)
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