お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
しごく当たり前だが、住まいを買うというのはお金だけの問題ではない。いちばん大切なのは、どういう暮らし方をしたいという具体的なイメージを持つことだ。夢ですよ、夢!ところが人の想像力というはわりと貧弱で、今の自分の暮らし方を基準にして、今よりもっと○○というくらいの希望しか持てないことが多い。
今より駅に近い、今より広い、今より日当たりがいいくらいの希望しか浮かばないと、理想の家は描けない。一度も引越しをしたことのない人もイメージを持ちにくいから、いずれ住まいも買いたいと思っている人は、賃貸時代に積極的に引越しをしたり、友人の家を見せてもらったりして、「家」や「住む」ことに対して豊かなイメージを持てるよう努力したい。できれば、日本の各地、世界のあちこちの家も見てみたい。
家を買っても、家族構成やライフスタイルの変化に合わせて住み替えるのが理想だが、日本は中古住宅の市場が整備されておらず、不動産売買にかかる費用がべらぼうに高いので、一度買ったら長く住む覚悟がいる。そのためにも自分のイメージをはっきり持って、なるべくそれに近い物件を選びたい。
● いつ買うか
簡単に買い換えられないことを考えると、住まいを買うのは「家族の暮らし方の具体的イメージがつかめる頃」がよいということになる。
とすると、結婚と同時、新婚早々に買うというのは、あまりよろしくない。夫婦の(特に女性の側の)働き方が決まってない場合が多いし、子どもが生まれるのかどうか、何人なのか、男なのか、女なのかもわかっていないし、教育方針も立っていない。たいていは頭金も貯まっていない。
4LDKの家を建てたが子どもが生まれなかったケースは資金面では困らないが、共働きを続けるつもりだった妻が仕事を辞めてしまったケースでは、家計は火の車になってしまう。
とすれば、結婚して数年たち、子どもの人数もほぼ固まった頃というのが、ひとつの家を買う時期の目安になる。
結婚しない人も、子どもを産まない人も家を買うのにちょうどいい時期がある。結婚しない、子どもは持たないという生き方を20代で決めていても、働き方は決まっているだろうか。頭金は十分貯まっているだろうか。相応の収入があるだろうか(借りられるローンの金額は収入金額によるので)。
以上のことを総合すると、ごく普通の人の場合は、家を買うのにいい時期は、家族構成や働き方、価値観がほぼ固まり、頭金も貯まって収入もそこそこ上がる30代後半〜40代前半ということになるだろう。
これが前回も話した「内部要因」で、家を買うタイミングを決めるのに最も重要なことだ。金利や不動産価格や優遇税制などの「外部要因」は、このタイミングをせいぜい前後に1〜2年ずらすくらいの力しかない。
● いくらのものを買うか
では、いくらの家を買うかだ。いくら高い物件を買ってもいいが、ローンは年収の4倍までを守って欲しい。年収700万円の人なら、ローンは2800万円までとなるので、頭金を700万円準備できたら3500万円の家が、頭金2000万円なら4800万円の物件が買える。
頭金は自分たちで貯める以外に、親や祖父母から贈与してもらう方法があり、今の税制では贈与を受ける人1人あたり、550万円までは贈与税が軽減される(住宅取得資金贈与の特例)。夫婦が双方の親から550万円ずつ贈与を受ければ1100万円。2000万円の頭金も非現実的ではない。この贈与の非課税枠をさらに広げる動きもあるので、住宅資金をもらえる可能性のある人は、今後の動向を気をつけてみておこう。
金利が低いから、もっと(年収の4倍を超えて)借りてもいいのではないかという人もいるが、金利が低いということは経済が停滞しているということだから、給料も上がりにくい。インフレにならないので住宅ローンの実質の返済負担はちっとも小さくならない(高インフレだと、ローンの返済金額は同じでも給料が上がるので実質の負担は減る)。やはり年収の4倍までは死守したい。
基準となる年収は、共働きなら夫婦の収入を合算してもいいとされるが、あくまでも妻が(もちろん夫も)ローン返済期間中は働き続ける場合だ。出産や育児で退職する可能性があれば、夫の年収だけを基準にローンを借りないと、途中で返せなくなるので気をつけたい。
では、頭金が全く貯まっていないゼロの場合、年収の4倍の物件を全額ローン買っていいか。う〜ん。ローン返済額+管理費+修繕積立金+駐車場代が、今までの家賃より安ければ大丈夫かもしれないが、原則は見合わせるべきだ。
貯金が全くできないというのは、まだまだお金の管理がきちんとできていないということ。そんな人がいきなり数千万円のローンを借りるのは、あまりにも危険が高い。それに、住宅ローンは(担保評価からも)不動産価格の8割までが原則だ。それ以上のローンを「簡単に返せますから大丈夫ですよ」と勧められても真に受けてはいけない。途中で返せなくなる危険性が非常に高い。最低でも年収分くらいは貯めてから、家を買うことを考えるべきだろう。
最近は新しいマンションが続々と売り出され、数年前に比べると値段も下がってかなり買いやすくなった。10年間は住宅ローン減税も受けられる。しかしじっくりと考えて欲しい。あなたは今「暮らし方」の豊かで具体的なイメージを描けるだろうか。年収の4倍までのローンで、希望の物件が買えるだろうか。もしまだなら、明らかに「時期尚早」だ。今はあせらないでイメージを育み、頭金作りに精を出そう。より理想に近い住まいを、もっともいいタイミングで手に入れるために。
(ファイナンシャル・プランナー 中村 芳子)
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