お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
● 誘惑に負けると借りすぎに
住宅ローンの第1条は「借り過ぎない」ことだ。当たり前といえば当たり前だが、この当たり前のことを守るのがなかなか難しい。
たとえば、予算4000万円までのつもりで捜し歩いても、上の階の4300万円のものに決めてしまう。新築マンションにオプションを追加してつい200万円オーバーしてしまう。新しいピカピカの内装に合せて、上質のカーテンを奮発し、つもりのなかった家具も新調してしまう。
もっと初歩的なミスでは、家を買う時にかかる諸費用というのを計算に入れてないというのもある。諸費用というのは、ローンを借りる時の抵当権設定費用、保証料、手数料などで、新築の場合で価格の3〜5%、中古を買う時は8〜10%と言われている(中古の方が各種費用が高い上に、仲介業者に払う売買手数料約3%がかかる)。
ちょっと気を許すとあっという間に500万円増で、予算オーバー分はそのままローンの増額となりがち。
● 金利が高くても年収の30%以内の返済
しかし、しかし、前回も言ったように、住宅ローンは「年収の4倍」が死守すべきラインだ。年収700万円の人で2800万円。夫婦の合計年収が
1000万円なら4000万円。後から予想外の費用がかかる可能性を考えると、最初は年収×3.5倍くらいのローンでプランを立てると安全なのだけど・・。これさえ守れば、どの金融機関から借りるか、固定か変動かということは(もちろん多少の損得は出てくるが)それほど大きな問題ではなくなる。
2800万円のローンを2%、25年で借りた場合の返済額(元利均等)は年142万円。6%だと216万円。年収700万円に占める返済割合は、20%と30%だ。20%なら理想的、30%は楽ではないが返せる範囲だ。退職金があてにできる人や、35歳以前に購入する人なら返済期間を30年にすれば、も少し余裕もでる。
変動金利型を借りて後で金利が上昇してもこれなら一安心だ。しかも金利上昇の影響は、ローン残高が少なくなるほど小さくなるから、適正額のローンなら5年後、10年後の金利上昇は恐るるに足らずである。ところが「借り過ぎ」だと、そう楽観的なことは言ッテラレナイ。2年前まで存在した住宅金融公庫の悪名高き「ゆとりローン(当初返済額を少なく押さえる分、6年目から返済額がアップする)」を借りた人は、そもそもがこの「年収4倍」をオーバーしている。返済額アップの6年目、金利アップの11年目と、住宅ローンに家計をギリギリと圧迫される恐怖を抱えて暮らすことになる。変動金利ローンを借りた人も同じ運命だ。
● すでに、借りすぎた人の対処法
でも、もう家を買っちゃってローンを大幅に借り過ぎちゃった人もいるだろう。とるべき方法は次の2つだ。
1つめは、せっせと繰り上げ返済をしてローン額を減らすこと。親から資金援助を受けられるなら、贈与税の控除額(年110万円)の範囲で贈与を受けて、繰り上げ返済にあてるという手もある(ただし住宅資金贈与を受けて特例を使った人はその翌年から4年間はこの控除を使えないか減額されるので注意)。このさい、裕福な親には上手に甘えてしまおう。
2つめは収入を増やすことだ。転職して収入アップが図れるならそれもいいし、適当な時期に妻が働き始めるのも現実的だろう。ただし株式投資や競馬での儲けは収入にはカウントしてはいけない。サラリーマンの副業も、本業に影響しない範囲にとどめないと逆効果だ。
適正額のローンのいいところは、借りた後は忘れてしまっていいという点。繰り上げ返済をしなくちゃいけないかしら、とか、ローンの金利が上がらないかしらとか心配する必要はない。もちろん時宜に応じた借り替えなどの「得する対処法」はあるだろうが、ほっておいても大損にはならないので、5年に1度くらい様子を見れば十分だ。楽チン、楽チン。
とはいえ、せっかくだから0.1%でも安く借りたいし、払う金利は1円でも少ない方がいい。次回は、上手なローンの選び方を考えてみよう。
(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)
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