お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
前回まで住宅ローンの話だったので、今日はそのほかのローンについてちょっと考えてみたい。
● 前向きのローンと後ろ向きのローン
個人が借りるローンは、2種類に分けられる。ひとつは、財産を作るため、あるいは保全するために借りるローン。住宅ローンや奨学金ローンなどがこれにあたる。前向きのローンだ。金利はかなり低い。
もうひとつは消費するために借りるローン。車のローンをはじめ、クレジットカードの分割払い、リボ払い、エステティックの分割払いなどほとんどのローンはこれにあたる。ローンで支払った後、ローンの対象物はあっという間に価値を失っていく。後ろ向きのローンで金利も高い。
前向きローンは上手に利用すれば、支払った金利のコスト以上に生活を豊かにすることができる。家は数十年住んだ後も一定の資産価値を持ち、奨学金で得た専門知識で生涯収入を増やすことができる。
後ろ向きローンは、生活を豊かにしないわけではないが、実際の価値以上の出費をしいられる。それに、たいていは買う時期を先に伸ばすとか、計画的に貯蓄するということを実行するだけで、その無駄な出費は避けられるのである。
● 車のローンに注意
車のローンを考えてみよう。大学在学中でも、就職してすぐでも、1台目の車をローンで買い、60回払いのローンがやっと終わった5年後に買い替えるとする。新車の代金と古い車の下取り価格の差額は、またローンを組む。こういう買い方が身についてしまうと、この人はおそらく70歳までずっと車のローンを借り続けるだろう。平均残高を100万円、金利を7%とすると、25歳からの45年間に利息だけで315万円払うことになる。
ところが1台目のローンが終わった時にぐっとこらえて、3年くらいで金を貯め、2台目から現金で買うようにすれば、300万円の利息を払わずに済ますことができる。毎月のキャッシュフローは楽になり、個人資産の貸借対照表もぐっと改善される。
近頃は、新車を購入する時に下取り価格を設定し、その差額分だけを借りて返済すればよいとするローンも登場している。250万円の車を頭金ゼロで買っても、ローンは200万円分だけという具合だ。一見ローンの負担が小さくなって良さそうだが、問題は次の買い替えの時だ。下取り価格がゼロなので、結局はその分余分にローンを組むことになってしまう。危ない、危ない。
というわけで、どのカーローンが金利が低くて有利かというのを探すのより、借りないですます方法を考えて実行するのが最上のプランだ。
そして、この結論はほぼすべての後ろ向きローンに当てはまる。特に、これから住宅を買おうと考えている人は、車のローンやその他のローンをすべて返し終わることが、資金計画の最初のステップとなることをお忘れなく。
● 後ろ向きローンは、早く返済してしまおう
住宅ローンは、借入額や返済期間が健全な範囲なら、あえて繰上げ返済する必要がないということを前回お話したが、後ろ向きローンはそもそもが不健全なローンなので、手元に余裕資金があれば一刻も早く返済してしまうべきだ。
「ローンを借りている人が投資をしてもいいか」という命題が、ときどき議論されることがある。住宅ローンについては、金利の水準とか景気の見方によって、専門家の意見が分かれることもあるが、後ろ向きローンについては議論の余地はない。投資にまわすお金があるなら、その分でローンを返すべきだ。金利の高い後ろ向きローン以上の利回りを(コンスタントに)投資でかせぐというのは、不可能だからだ。
今まで多くの人たちの家計を見てきたが、家計にも体質がある。貯蓄上手な体質の人たちは、必ず自動積立てをしていて、目的を持っており、無駄な支出が少ない。逆に貯蓄下手な体質の人たちは目的意識が薄く、たいていがローン体質で、後ろ向きローンを借りることに抵抗がない。いつも何かのローンを借りている状態だ。
貯蓄下手から貯蓄上手へ体質改善をするには、まず後ろ向きローンを整理することがから始めるのがよさそうだ。
(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)
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