お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
いつからを老後としますか
2002年9月15日現在、日本の65歳以上の人口は2362万人で、総人口の18.5%に、75歳以上が1003万人、7.8%となったそうだ。新聞は”高齢者が増えて、日本の経済もいよいよ大変だぞ”とおどしをかける。
しかしさて、高齢者とは何歳以上の人を言うのだろうか。平均寿命が男女平均で80歳を超えてどんどん伸びているのに、以前からと同じように65歳以上を高齢者、65歳以降を老後と定義するなら、なんと人生の2割近くを”余生”として送ることになる。これはちょっと変だ。
余生とか老後というのはせいぜい人生の20分の1、長くても10分の1で十分ではないだろうか。とすると余生は4〜8年、77歳または72歳以降が余生ということになる。寿命が延びれば、現役で働く期間も伸びて当然で、上の前提で行くと75歳くらいまでは働こうということになる。
退職後資金設計が”大変だ、大変だ”と騒がれる理由はいくつかある。
ひとつ目は公的年金がどんどん減額されつつあるから。高齢者が増えて(子どもも減って)、現在の年金制度を維持するの難しくなっているためだ。
ふたつ目は老後が長くなっているから。60歳定年で平均寿命が65歳なら、公的年金とささやかな退職金があれば、経済的な心配なしに”老後”がおくれた。だが60歳定年で80歳まで生きるなら、年金が減ることもあり(しかも給付は65歳からになる)、退職金だけでは全然足りないということになってしまう。それ以外に5000万円貯めろという人もいる。
しかし、平均寿命の延びに応じて、高齢者の区切りを少しずつずらしていけば、問題は少しゆるやかになる。社会の制度は簡単には変わってくれないが、自分の意識と生活設計を変える事で、世の中のちょっと先を行く”退職後設計”が可能になるわけだ。
アメリカでは”早く金を貯めて40代や50代前半で早期退職”というのが、多くの人の夢だと言われるが、果たしてそれが日本人に当てはまるかは疑問だ。
人が喜びを感じるのは、自分が評価された時、何かを達成した時、社会や人の役に立ったとき、人に感謝されるときだ。ところが引退してしまうとそのチャンスはめっきり減ってしまう。ボランティア活動が根付いていない日本で、退職してボランティア活動に喜びを見出すというのは、現実、難しい。でも、年をとっても何らかの形で仕事を続ければ、社会の役に立ち、何かを達成でき、評価され、感謝されることができる。
同じ会社に勤め続けられなくても、収入が大幅に減っても、働き続けることができれば、”退職後に備える資金設計”は、ぐっと楽になる。楽になるというのは、若いときに将来に備えて貯めるべき割合が少なくなるということだ。
「1日も長く働きつづけるのが、最善の”退職後資金設計”です」と声を大にして提唱する。
「そんなぁ、60過ぎても70過ぎても働けっていうの? オレ40代だけど1日も早く仕事やめたいよ。そんなに体持たないよ」という声も聞こえてきそうだ。確かに30代、40代と同じ働き方をずっと続けるのは無理。だからこそ、60代、70代で、どう働くかをプランする必要があるのだ。嫌なこと、嫌いなことは続けられないし、1日8時間週5日働くのもちょっとつらいかも。
ある男性は60歳を過ぎても働きつづけるために、50代後半に仕事をやめ、植木の修行をして植木屋になった。定年退職してからでも可能だったが、まだ体力に自信がある50代のうちにと計画し、実行したのだ。会社づとめで養った営業力もあったので、開業後も順調に依頼があり、商売は繁盛しているとか。
年を取るにつれ、体力や気力が少しずつ衰えるから、好きなことを好きなペースでなくては続けられない。1日5時間とか、週3日とかいう働き方もよさそうだ。
そのかわり収入は年200万円あれば十分。月8万円の年96万円だっていい。61歳から75歳までの15年間、年96万円の収入があれば1440万円。この分退職後に備える貯蓄を減らせるのは大きい。おまけに、仕事は生きがいになり、規則正しい生活をすることになり、適度に体を動かすので、病気にもなりにくくなる。時間を持て余すことがないから、ひまつぶしにお金を使うことも減る。よいことだらけだ。
「退職後に備えてお金を貯め始めるのは40歳から」と、いつも話している。しかし40歳を過ぎたら、資金面で退職後に備え始めるのと同時に、60歳以降の働き方も考え始めたい。会社を離れてどう働くか。難しい課題だが、20年かけて考え準備する価値のある宿題だ。そしてこの答えを出すには、じゃあ50代でどう働く、それには40代でどう働くという命題から、順に解決していかねばならなくなる。簡単ではないですね。お金を貯める方が簡単かも。
次回から、ぼちぼちお金のことも語っていきます。
(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)
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