退職後を考える(2)

お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)

退職後を考える(2)

算数に挑戦しよう

言うまでもないが、お金のことを考えるには、算数ができなくてはいけない。数学レベルならなお良いのだろうが、私が普段使うのは算数だ。
ちょっと練習してみよう。

問1)山田太郎さんは、毎月の保険料が2万3000円の保険に加入してます。保険料を払う期間は28歳から65歳まで。山田さんは全部でいくらの保険料を払うことになるでしょう。

簡単ですね。
23,000(円)×12(ヶ月)×38(年)=1,048万8,000円 
約1,050万円です。わぁお。1,050万円!!!!

問題は、この簡単な計算をしたことがない人がたくさんいるということだ。(自分の生命保険料の総額を計算したことありますか?)これは小学校の算数。高校や大学を卒業した人が、この計算をすることなしに生命保険に加入してしまうのが、日本人の不思議なところだ。

人生は複雑で、数字では表現できないことがたくさんあるが、お金のことは数字で単純に表現できるかず少ない「単純なこと」だ。計算してみれば、すぐに答えがでるのだから。公文式で、お金の文章題を扱ってくれたら日本は変わるかもしれない。

退職後のお金を考える時に、口を酸っぱくして申し上げることがある。「いろんな記事や統計の金額を真に受けてはいけない」ということだ。統計や試算の数字を見るときには、どういう機関が、どういう目的で、どのような対象に、どのような質問をし、どのような前提で試算した結果なのかを、必ず確認したい。

「退職後の生活費はいくら必要だと思いますか」という質問でも、東京に住む20代に聞くのと農村に住む60代に聞くのでは、答えは全く違うし真実味も違う。これらを一緒くたにした調査・統計なんか、なんの意味があるんだろうと思いませんか?

退職後のお金、つまり生活費がいくらかかるかとか、いくら貯めたら大丈夫かということについて、あなたの参考になる「平均値」はないと思った方がいい。だから覚悟を決めて自分で計算するしかない。さあ覚悟を決めなさい。

練習のために、もうひとつ問題をやってみよう。

問2) 田中次郎さん(50歳)の現在の生活費はA)のとおりです。※印がついているのは、退職後はかからなくなる出費です。また、今はかかっていないけれど、退職後にかかりそうな出費はB)のとおりです。田中さんの退職後の生活費はいくらになりますか。

  A)現在の生活費(月平均)
    住宅ローン  12万円※
    食費      8万円
    光熱費等    4万円
    教育費等   18万円※
    夫小遣い    7万円
    交際費等    4万円
    生命保険料等  6万円※ 
    雑費等     6万円
    税金等     2万円
    貯蓄      5万円※  合計72万円
    
  B)健康保険料等  4万円
    余暇費等    5万円   合計9万円

720,000−(120,000+180,000+60,000+50,000)+90,000=400,000
答えは40万円。ちょっと大きな数字になったのは、手取り年収864万円(税込みなら1000万円超)のわりと裕福なケースを使ったから。手取り月収50万円クラスなら、退職後の生活費は20万円台で収まることも多い。 
この計算は40代以前の人がやってもまだ真実味が薄いが、練習のために一度、自分のケースでやってみるといいだろう。「じゃあ、やってみよう」と思うとすぐに気づくが、計算するためには、自分が収入をどんなふうに使っているか、いくら貯蓄しているかを知る必要がある。これを知らないで、退職後の生活費は40万円は欲しいなあ、いや50万円かなと言っても全く意味はない(そういう数字を調査・統計してたりするのだが)。

お金のことを考えたいなら、それが特に退職後資金なら、自分で計算すること、これが大切だ。パソコンなんていらない、電卓で十分。ケータイの簡易計算で事足りる。さあ、小学生に戻ったつもりで、自分に与えられた文章題を解いてみよう(必要な人は1ヶ月だけでも支出記録をつけてみること)。

次回はも少し高度な問題に移ります。

(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)

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