お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
君は公的年金制度を知っているか?
「公的年金?どうせ、俺らの頃にはもらえないんだろ?全然あてにしてないよ」という言葉をよく聞く。でもこの態度、ダイジョウブだろうか?
これを真に受けるなら、その人の態度は次のふたつのうちのひとつになる。ひとつめは、公的年金をゼロとして計算し20代のうちから、蟻のように蓄えられるだけ蓄える。もうひとつは「今のうちに楽しんじゃえ、年をとったときのことは考えないようにしよ〜」とキリギリス的になる。
どっちもオカシイ。
どうして公的年金がもらえなくなると言われているか?
そう、高齢化と少子化が進んでいるからだ。
しかし、問題は年金のシステムそのものにある。高齢化・少子化が進むと破綻するような設計にするからいけないのだ。根本的に変えるしかない。もう人口が増え続けることなんてないのだから。
さらに深刻な問題は、年金制度の改革は急を要するのに、年寄りがその役割を担っていることだ。彼らは改革を先延ばしにして自分の既得権を獲得することに熱心なので、その分若い世代へのしわ寄せがどんどんきつくなってくる。
警告1
「改革を先延ばしにするほど、若い世代へのしわ寄せはさらにきつくなる!」 しわ寄せ(1)保険料が高くなる!
しわ寄せ(2)もらえる年金額が少なくなる!
しわ寄せ(3)もらい始めの年齢が高くなる!
もうひとつ。年金制度は男が男の論理で作ってきたから、女性の年金の不公平さといったらない。
警告2
「オジサンたち(だけ)に作らせると、女の年金がめちゃくちゃになる!」 めちゃくちゃ(1)結婚相手によっては、保険料を払わなくてもいい
めちゃくちゃ(2)結婚相手によっては、遺族年金がもらえない
めちゃくちゃ(3)離婚すると年金は大損!
とにかく、今の公的年金制度は問題だらけだ。これを認識しよう。
今の年金制度を知らないと話は始まらない。
たとえば報酬比例制度。会社員は収入の高い人ほど、収入に比例した高い保険料を払い、そのぶん多くの厚生年金(正確には老齢厚生年金)をもらうことになっている。一見合理的に見える、これは自分が払った分を自分でもらえば、の話。実際にはもらう分の2割程度が自分が保険料を払った分に相当し、残りの8割は現役世代からの所得移転といわれる。
つまり、年100万円の老齢厚生年金をもらっている人は、現役世代から年80万円を受け取っており、年400万円の人は320万円の所得移転を受けているわけ。裕福な人ほどたくさんの補助(のようなものだ)を受けている。我々の血と汗の保険料が、金持ちじいさんの小遣いになっているのが現実だ。ところが30年後の我々の年金は、金持ちじいさんの半分もないかもしれない。これは、氷山の一角。
第3号被保険者の仕組みなんて、ナンセンスの極みだ。自営業者の妻は、収入ゼロでも月13300円の保険料を自分で払わなくてはいけない。夫の収入が月20万円でもだ(2人分の国民年金保険料だけで2万6600円に!)。ところがサラリーマンの妻は、夫の年収が2000万円を超えていても、保険料を1円も払わなくてよい(本人の収入が年130万円未満のとき)。彼女らの分の保険料は、非婚・既婚のサラリーマンの男女全員で負担する。もらえる年金額(老齢基礎年金)の額は払った人と同じ。
それだけではない。夫が亡くなったとき、1円の保険料も払ってなかったサラリーマンの妻は、遺族厚生年金を一生もらえる。毎月国民年金保険料を払っていた自営業者の妻は、18歳未満の子供がある間だけ遺族基礎年金をもらえる(サラリーマンの妻も同じ)が、子がなかったり、子が18歳を過ぎていたら、遺族年金は1円ももらえない。
変でしょ?ものすごく変だ。
退職後のお金を考える時、公的年金を外してはプランを立てることは不可能。だから、あなたが20代でも30代でも(お金をすぐ貯め始めるかは別にして)公的年金制度の仕組みと、自分がいくらくらいもらえるかの目安(現行制度で)を知らなくては話にならない。
でも、それだけじゃない。今の20代30代が、年金制度を正しい方向に変えていかなくては、どんなに自助努力をしてもアワとふっとんでしまう。
女性も、第3号(国民年金の第3号被保険者=サラリーマン等の配偶者で年収130万円未満の人は保険料を払わなくても払った事になる)の既得権や特権に騙されないで、立場や身分で損得のない制度をつくっていかなくては。じいさんたちに任せてはおけない。
次回から、年金制度の仕組みをちょこっと解説します。
(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)
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