お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
超大ざっぱな公的年金講座(その1)
退職後のお金を考える時に、公的年金を知らなければ話にならないということはこれまで説明したとおりだ。
公的年金制度は複雑怪奇だが、せめて基本だけは押さえておこう。
原則として、公的年金は20歳から60歳までの世代が払った年金保険料を65歳以上の世代に年金として払う仕組みだ。
年金保険料
20〜60歳の男女 ―――→ 65歳以上の男女
年金
● 国民年金の保険料を払わないのは脱税と同じ
日本に住む人は全員が、国民年金制度に加入することが「義務」づけられている。払わなくても市役所の人が集金に来たりはしないけど・・。
会社員や公務員なら、給料から保険料が否応なく天引きされるが、自営業者などは、自分で払う手続きをすることになっている。そのため「収入が少なくて払えないよ〜」とか「元がとれねえんだろ、払わないよ」とかいう理由で払わない人も少なくない。こういう保険料滞納者は、自分で保険料を払うべき人全体の1割を超えている。困ったもんだ。
別に、保険料を払わなくても罰則規定はない。ただ、自分が年金がもらえないだけである。
もらえないのは、年をとってからの年金(老齢年金という)だけではなく、病気や事故で障害を負った場合の障害年金とか、まだ高校生以下の子がいる時に若くして死んじゃったときの遺族年金とかももらえない(遺族が)。
じゃあ「年金いらねぇから払わないよ」という態度が許されるかというと、そうではない。滞納などで年金の財源が不足する分は、税金で穴埋めされている。つまり国民年金保険料を払わないのは、間接的な脱税と同じだ。まわりにそういう人がいたら皆んなで攻め立てて払わせよう。でないと、真面目に払っている人が馬鹿を見る。
本当に収入が少なくて払えない人には、保険料を払わなくてすむ「免除」や半分で勘弁してもらえる「半額免除」の制度があるから、教えてあげよう。
ここまで来て「えっ、私は会社員だから、国民年金じゃなくて厚生年金でしょ?」と思ったあなた、半分正解で、半分間違いだ。
● 厚生年金は、国民年金にプラスして入るもの
不思議なことに加入する年金制度は、職業によって違っている。
国民年金は皆が入ることになっている。そして、会社員はそれにプラスして厚生年金に入ることになっている。つまり、給料からは「国民年金の保険料」と「厚生年金の保険料」の両方が引かれている。給料明細に「厚生年金保険料(等)」とあるのは、両方の合計額なのである。
だから、自営業者などは国民年金からだけ年金をもらうが、会社員は国民年金と厚生年金と両方から年金をもらう。だから自営業者と会社員では払う保険料の額も払い方も、もらう年金もかなり違うのだ。
● 国民年金は定額、638万円払えば1206万円もらえる?
そもそも、国民年金と厚生年金では仕組みが違う。
国民年金の保険料は、年収200万円の人も年収1億の人も同じ。今
(2002年度)なら、月額1万3300円だ。
この保険料を20歳から60歳まで40年間、全期間払った場合にもらえる年金額は年80万4200円。65歳から生きている限りもらえる。月にすると6万7000円だ。
いろいろな事情で保険料を払っていない期間があると、その分(月割計算で)減らされる。仮に10年払っていない期間があると、80万4200円×30年/40年で、約60万円になる。月5万円だ。でも、保険料を払った期間(+免除の期間)が25年に足りないと1円ももらえないので注意!
保険料や年金額は物価水準を見て、毎年見直されるが、今の数字で計算してみよう。国民年金に40年加入して、65歳から80歳まで年金をもらうとすると、支払う保険料は合計638万4千円。一方もらう年金の合計は1206万円だ。638万円払って1206万円もらう。65歳未満で死ぬと(老齢年金は)1円ももらえないし、105歳まで生きれば3216万円もらえる。
このほかに、先にも言った障害になった時や、若くして死んでしまったときの保障が多少なりともあるのだから、国民年金はまるまる損とは言えないと思うがどうだろう。
ただし、これは今の保険料と年金額の水準で計算した場合。これからの人口の減り具合によって、保険料は20年後くらいまでに2万円前後に値上がりするという試算がある。これは正直けっこうきついゾ。
● 厚生年金は給料に比例 月収35万円なら年114万円?
厚生年金は「報酬比例」という考え方が取り入れられている。会社員は給料の高い人ほど高い保険料を払い、その分年金もたくさんもらえるという仕組みだ(計算式などは次回にご紹介する)。
22歳から60歳まで会社に勤め、その間の平均月収※が35万円の人は65歳から、約114万円の厚生年金(正確には老齢厚生年金)が、45万円だった人は約146万円の厚生年金が、先の国民年金(正確には老齢基礎年金)にプラスしてもらえる。 ※正しくは平均標準報酬月額
だから合計すると、平均月収35万円だった人で年194万円、45万円だった人で年226万円くらいになる(20歳から国民年金に入っていたとして)。
少しはイメージつかめたかな? 次回は厚生年金のことを、も少し詳しくやります。なお、実際の年金制度には、経過措置や特例がたくさんあって複雑だ。今回の講座は20代〜30代の人向けに、これらをできるだけ省いて解説しているのでご了承いただきたい。
(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)
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