退職後を考える(5)

お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)

退職後を考える(5)

超大ざっぱな公的年金講座(2)

サラリーマンの年金

前回は、公的年金制度の大まかな仕組みと、国民年金の話をした。繰り返すが、払えるのに国民年金保険料を払わないのは脱税と同じだ。これはどうやっても正当化できない。未納者、滞納者は心して欲しい。

● 厚生年金は現役時代の6割をもらうイメージ
で、サラリーマンの年金。こちらは「損だから入らない」ことはできない。厚生年金(+国民年金)の保険料が、給料から強制的に天引きされてしまう。厚生年金のイメージはこうだ。「年収の13.6%くらいの保険料を払い、65歳から国民年金と合わせて、現役時代の6割程度の年金収入をもらう」
保険料は今は13.6%だが、少子化が進むにつれ25%とか28%とかに増えるという予想もある。先日、厚生労働省が、それはあんまりなので上限を20%にしようという案を出した。その分もらう額も減ることになるだろう。
● 月収36万円の人で年間の保険料は76万円
それにしても、自分がいったいいくらの保険料を払っているかは、給与明細で確認した方がいい。その多さにびっくりするはず。たいていの人は所得税の何倍も払っている。

平均月収36万円(残業代・交通費なども含む)の人で保険料は
3万1230円!が、これだけではない。これは本人負担分で同額を会社が負担しているから、合計で6万2460円だ。それからボーナスからは現在0.5%(会社負担分と合わせると1%)が保険料として引かれている。
ボーナスが年4ヶ月分(144万円)とすると、1.4万円が保険料となり、年間で約76万円払うことになる!      ※保険料は2002年度
22歳から60歳までの月収とボーナスの平均をこれだとすると、38年間で払う保険料は2888万円だ。わ〜ぉ。

前にも言ったが、第2号被保険者(サラリーマンや公務員で、国民年金+厚生年金―公務員は共済年金―に加入している人)は、このグループ全体で第3号被保険者(サラリーマンや公務員の妻で年収130万円未満の人で国民保険料を払わなくてもいい人)の国民保険料も負担している。

で、現行の年金制度でこの人がもらえるのは、

国民年金からの老齢基礎年金 = 年80万円
            注)20歳から60歳まで40年加入した場合厚生年金からの老齢厚生年金 = 年117万円

なお、老齢厚生年金の計算式は次のとおりだ。
「平均標準報酬月額×7.125/1000×厚生年金に加入した月数×物価スライド率(現在は1.00)= 老齢厚生年金額(年額)」

● 2888万円払って2955万円もらう?
合計で年197万円。65歳から80歳まで受け取ると合計額は2955万円。2888万円払って、5年(60歳から64歳まで)据え置き、もらうのは2955万円。公的年金は物価スライド(物価の上昇割合に応じて年金額も増える)なのでインフレによる目減りは一応心配しなくてよいが、それにしても・・・。それなのに、これからもっと保険料が上がり、もっと年金額が下がっていくのだ。

日本のサラリーマンの年金は、世界に類を見ない高い給付率と言われる。しかし、こんなに効率の悪い年金制度なら、給付率を「最低限の生活ができる程度」に引き下げて保険料の負担を小さくし「残りは自分でやってね」にした方がずっとよいと思いませんか。

なお、今の保険料の決め方では、同じ年収でもボーナスの割合によって保険料が変わってくるので、来年4月から、基本的にはボーナスも計算に入れた「総報酬制」になる。月々の保険料や上にあげた計算式も変わってくる。

ボーナスなしの年棒制だった人は、保険料の負担が減り、ボーナスの割合が高かった人は保険料の負担が増える。ただし、支払う保険料に対してもらう年金の額のイメージはだいたいこんなものだと理解してもらっていいだろう。 
これから2004年の年金制度改革案が提示され議論される。20代、30代のビジネスマンの皆さん。もう、人ごとではありませんね。

次回から、年金制度を踏まえた「退職後資金」づくりに入っていきたい。
(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)

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