お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
絶対金額でなく、%で考えよう
アメリカのマネー誌を見ていたら、「退職後のお金より子どもの大学資金の方が問題」という主旨の記事があった。退職後資金が株価の下落で目減りしても、その分何年か余分に働けばすむけど、子どもの大学進学費用はデッドラインがあって待ったなし。こっちの目減りの方が深刻だというわけ。ごもっとも!
でも、いいよね。あと3年働こうと思ったら働けるなんて。日本のひとつの問題は「退職年齢」が固定されていることだ。だからこそ、前にも書いたが、自分が働き続けたい年齢まで(体力的にも能力的にも)働ける自分をつくることが大切だ。
さて、前回まで、公的年金制度のおおまかな仕組みや金額について説明した。・国民年金に、フルで(20歳から60歳まで40年間)加入した自営業者などは、65歳から年に約80万円の年金(老齢基礎年金)がもらえる。
・22歳から60歳まで会社づとめで、38年間の平均給与が36万円だった人は、65歳から年に約197万円の年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)がもらえる。
公的年金の良いところは、インフレスライドになっている点だ。つまり物価水準が10%上がると、もらえる年金額も10%上がる(保険料も上がる)。
そこでお勧めしたいのが、退職後の設計を、毎年の生活費○○万円、必要な貯蓄額××千万円のように、金額で考えるのではなく、割合で考える方法だ。
<40歳 自営業者の例>
今の手取り年収が600万円。これを基準に考えよう。
退職後に必要な年間生活費をこの60%としよう(退職後は、住宅ローンが終了し、子どもの養育・教育費がかからなくなり、生命保険料の支払もほぼなくなり、貯蓄もしなくてよいため)。
年間生活費360万円のうち、公的年金でまかなえるのが夫婦で160万円、不足額は200万円となる。現在の年収の33%だ。
この33%を、65歳から85歳までの20年分準備するなら、33%×20=660%
65歳までに、現在の年収の660%(つまり6.6倍)を貯める必要があるということだ。
準備期間を40歳から64歳まで25年とすると、毎年同じ額を貯めるなら、660÷25=26.4 年収の26.4%を貯蓄に回す必要があるということだ。
これはけっこう大きな数値だ。これと並行して子どもの学費なども貯めなくてはいけないのだから。そこで、子どもが大学を卒業して独立した後に貯蓄を増やし、それ以前の貯蓄の割合を減らすという調整をしてみよう。
55歳から64歳までの10年間の貯蓄を年収の37%に上げられるなら、40歳から54歳までの15年間は年収の19%の貯蓄ですますことができる。
実際には貯蓄に利息が付いたり、インフレで目減りしたりと複雑な要因が絡み合う。インフレ率を上回る優秀な成績で資金を運用できれば、その分毎年の必要積立て額は少なくてすむ。逆に、運用利率がインフレ率を下回るなら(あるいは、相場下落などでデフレ率以上の損失を出すなら)、積立て額はもっと増やす必要があるだろう。
しかしこの考え方なら”退職までに4000万円”とか”年3%のインフレなら実際には8000万円以上必要”とかいう、実感の持てない数値に振り回される恐れがない。インフレなどで収入が増えれば、その分同じ割合を保つよう貯蓄額を増やせばよいし、不況で収入が減れば貯蓄も減らせる。貨幣価値の伸び縮み分を「%で考える」ことで、うまく吸収できるのだ。
同様に、今後の制度改正で年金額(給付率)が下がった場合も、%で考えると対応しやすい。
同じ論理で、次回はサラリーマンの例でやってみよう。お楽しみに。
(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)
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