お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
絶対金額でなく、%で考えよう(2)
● 年金額が下がるのは間違いない厚生年金
将来の厚生年金(+国民年金)保険料の負担の上限を20%にしよう。という案が有力になってきた(現在は13.6%)。そうすると今の年金の水準(現役時代の手取り収入の約6割)を維持できなくなるのは決定だ(個人的には今の水準を維持する必要はないと思ってますが)。
前回(11月27日のマネックスメール)は、国民年金に加入している人の退職後資金設計を「%」で考えてみた。例では、65歳までに年収の660%分を貯める必要があり、それには40歳から毎年平均で年収の26%あまりを積立てる必要がある、という結果になった。
● 公的年金は現役時代の収入の4割と仮定
では、もらえる年金額が大きいサラリーマン、つまり厚生年金加入者の場合で見てみよう。前回と同じく、40歳で手取り年収600万円とする。
厚生年金加入者のモデルケース(夫がサラリーマン・妻が専業主婦)でめざしているのが、夫婦の年金を合わせて、夫の現役時代の可処分所得の6割程度というもの(内訳は、夫の年金が4.5〜5割、妻の年金が1.5〜1割。夫の収入が高いほど妻の年金の占める割合は低くなる)。
この数値で計算してもいいのだが、給付水準が下がるのはハッキリしているから、将来の年金額を、夫婦合わせて現在の年収の4割(つまり今の制度の水準より3割減)として考えてみよう。かなり保守的な数字だ。
手取り600万円なら、年金額は240万円だ。
● 生活費のために必要な貯蓄は、年収の3〜6倍
退職後の生活費は、現役時代の6割とする。4割分は公的年金で補えるので、年収の2割分が毎年不足することになる。65歳から80歳まで15年間分なら、2割×15=3(年分)。年収の3倍必要ということだ。
※自営業者は85歳までとし、サラリーマンは80歳までとしたのは、サラリーマンの妻は、遺族年金がもらえるため
しかし、60歳退職で再就職しないとすると、60歳から64歳までの5年間は年金がもらえないから、年収の6割相当の支出5年分が加わる。6割×5=3(年分)。さらに3年分必要なので、計6年分だ。
● 退職金や特別支出も考えてみる
多くの会社では退職金が支給される。退職金額が40歳時点の手取り年収の3倍(3年分)なら、必要金額6年分から、この分を差し引くことができる。6−3=3 また3年分にもどった。
これに退職後に必要な支出を加える。家の修理費用など、年間の生活支出では補えない分だ。退職後の生活費の2年分あれば十分だろう。6割×2=1.2(年分)。合計すると4.2年分、年収の420%ということになる。
● 40歳から年収の21%の積立てが必要
年収の420%分を、40歳から60歳までの20年間で貯める計画を立ててみよう。毎年同じ額を貯めるなら、420÷20=21。毎年の必要積立て額は手取り年収の21%となる。けっこうつらい。
前半の負担を減らすため、54歳のときに子どもが独立するとし、55歳以降の積立て額を年35%に増やしてみよう。子ども独立後はこのくらいの貯蓄はできるものだ(その気になれば)。とすると、40歳から54歳までの15年は年収の16.3%の積立てでよい。年収600万円なら年98万円となる。
● 64歳まで働ければ、ぐっと楽チンに。
上のケースは、60歳〜64歳まで一切働かないとする、けっこう怠けもののプランだ。この間、貯蓄を崩さないですむだけの収入、つまり現役時代の6割の収入を(夫婦2人で)得れば、貯蓄必要額は一気に1.2年分まで減る。これなら、40歳から60歳まで年収の6%を貯めるだけでOK。あるいは、54歳まで3%、55歳から15%でも可。これなら楽勝だ。
5年分の労働がどれだけの意味を持つか、数字がはっきり示してくれる。
● 自分のケースで試算してみよう
ちょっとめんどうだが、考え方は簡単なので、自分のケースで数字を当てはめてみて欲しい。ポイント(大きく数字が変わるところ)は、次の2つだ。(1)退職金が現在の手取り年収の何倍の水準か
(2)60歳から64歳までの5年間をどうするか
何度も繰り返すが、退職後の資金設計は、平均値ではなく「自分のケースではどうなるか」「自分はいくら必要か」を知ることが何よりも大切。これがわかって初めて、確信をもって次のステップに進むことができるのだ。
(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)
マネックスからのご留意事項
「10年後に笑う!マネープラン入門」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。