退職後を考える(8)

お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)

退職後を考える(8)

絶対金額でなく、%で考えよう(3)

クリスマスに年金の話も何ですが、めぐり合わせなのでしかたない。お付き合いください。

前回(12月11日)は、サラリーマン+専業主婦夫婦の公的年金と、貯蓄プランを考えてみた。今回は独身者と、共働き会社員のケースを考えてみよう。
● 独身者、公的年金(厚生年金)は、年収の4.5割

今の年金制度は、現役時代の約6割を支給することを目指しているが、それは「サラリーマンの夫+専業主婦の妻」のケース。公的年金(厚生年金)にも「配偶者手当」的性格の加算があって、そのおかげで6割を達成できる仕組みとなっている。

だから、生涯年収が同じだったサラリーマンでも、扶養する妻のあるなしで、もらえる年金額は変わってくる。独身サラリーマンや、妻が会社員・公務員だったサラリーマンは、この「手当て」がつかないからだ。

この場合、もらえる年金額は(現行で)手取り年収(以下、年収はすべて手取り)の4.5〜5割程度(ボーナスなどの割合によって変わる)。男性も女性も同じだ。

将来の減額をおりこみ、3.5割としてプランを立ててみよう。退職後の生活費を、現在(40歳時点)の6割程度とすると、年収と生活費、年金額はだいたい以下のイメ−ジだ。

   年収      退職後の生活費    年金額
   300万円   15万円/月   11.3万円/月
   500万円   25万円/月   14.6万円/月        700万円   35万円/月   20.4万円/月 

生活費が6割、年金額が3.5割なので、差額は年収の25%。これを65歳から80歳まで準備することが、ゴールになる。年収の375%。年収の3倍の退職金がもらえるなら、自分で準備する生活費は75%。2年分の特別支出費を加えると275%となる。

これを40歳から60歳までの20年で貯めるには、平均して年収の13.8%を積立てればいい。子どもがないなら、シンプルに毎年同じ割合を貯めていけばいいだろう。

独身会社員は、退職までに家賃のかからない住みか(買ってもいいし、実家という手もある)を確保し、年収の2〜3倍を貯めるのがひとつの青写真だ。
● 共働きは退職後の生活費が少し安く上がるので有利

共働きは、基本的に独身者が2人集まったとして考えればいい。配偶者手当的なおまけはつかないからだ。

ただ実際には、2人とも退職して生活がシンプルになれば、生活費は現役時代の5割程度でまかなえるはず(共働き時代は何かとアウトソース・コストがかさむので)。たとえば次のような感じ。

   2人分の年収  退職後の生活費  2人分の年金額
   800万円   40万円/月   23.3万円/月

これなら、退職までに準備すべき生活費は225%、3年分の退職金がもらえれば、特別支出(2年分)を計算にいれて、準備すべきは年収の125%。年6.3%の積立てで達成できる。

余談だが、妻が自分の厚生年金※を受け取っていて、夫が先に亡くなった時、妻は次の3つのパターンからいちばん金額が多くなる組み合わせを選べる。 
 1)自分の基礎年金 + 自分の厚生年金    
 2)自分の基礎年金 + 夫の遺族厚生年金
 3)自分の基礎年金 + 自分の厚生年金の 1/2 
           + 夫の遺族厚生年金の2/3
   ※厚生年金は老齢厚生年金の略  基礎年金は老齢基礎年金の略

● 退職金、企業年金はかなり事情が違うので自分のケースを

実際には、年収の4倍以上の退職金が出る会社、企業年金が出る会社も少なくない。夫婦2人ともが、退職金・企業年金の充実した会社に退職まで勤めるなら、実際のところ、退職後のための貯蓄はいらないくらいだ。

一方で、退職金がほとんどない会社もある。中途入社で退職金が期待できない人もいるだろう。共働きとはいえ、妻の収入は夫の半分以下というカップルもある。何度も言うように、ご自分のケースで試算してみられたい。

それから「一生独身のつもりが結婚しちゃった」とか、「会社づとめだったけど、フリーランスに転向」とか、途中で事情や加入年金が変わることも多い。そのときは、その時に試算し直して、プランを練り直せばいい。現状でプランを立てて実行していれば、軌道修正は意外に簡単だ。

(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)

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