退職後資金 ― 60歳までに年収分貯めるプラン

お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)

退職後資金 ― 60歳までに年収分貯めるプラン

 絶対金額でなく%で考えよう(5)

●退職金のあるサラリーマンの貯蓄目標 ― 年収1年分
前回いろんなパターンの試算をした結果、退職金のもらえるサラリーマンなら、退職までに年収の1年分くらいを貯めれば、とりあえず大丈夫ということになった。独身者も既婚者もだいたい同じ。パートナーも同じ条件の共働きカップルならもっと少ない蓄えでもいいが、1年分を目指してもわるくない。

なお、年収はだいたい40歳くらいの水準の手取りで考えている。

これにはいくつか理由がある。まず、20代、30代から「退職後のための貯蓄」をする必要はないと考えているから。この時期は、結婚(新生活スタート)や住宅購入、子どもの教育費などの貯蓄をするときで、これらのお金をきちんと準備して、余分なローンを負わないことが、間接的に退職後資金の準備につながるからだ。また30代までは、ライフスタイルや家族構成がコロコロ変わるので、収入も支出も流動的で、長期的ビジョンを持ちにくいのも事実だ。
●40歳から始める
このシリーズで何度も言っているが、具体的に退職に備え始めるのは40歳からで十分。だが、40歳になったすぐ始めたい。準備期間を20年たっぷりとりたいからだ。

40歳は3つの型に分類できる。まず、結婚して小学生か中学生の子どもがいるファミリー型。結婚して子供がいない夫婦型。そして独身型。どのパターンでも、収入や支出、生活のスタイルがほぼ固まっている頃なので、自分に合う資金づくりの計画を立てられるはず。

貯め方のパターンは、既婚か独身かによってではなく、子どもがいるかいないかで違ってくる。子どもが独立するまでは、どうしてもそちらにお金がかかるので、貯蓄額は最初は少なめ、独立後に大きく増やすということになる。
●子どもがないなら、年収の5%を20年
子どもがなければ、40歳から60歳までの20年間、同じ金額(割合)を貯めていけばいい。簡単だ。1年で年収の5%。年収600万円の人なら年間30万円、月2万5000円貯めるだけでいい。 

●子どもがあるなら、独立後に積み立てを増やす!  
子どもが30歳と33歳の時に生まれたとすると、彼らが大学を卒業するのは52歳と55歳の時となる。大学在学中は、親の年収が高い時期ではあるが、その2〜3割は教育費や仕送りとして消えていく最も厳しい時だ。

しかしその時期が終われば、その分を貯蓄にまわすことができる。たとえば、以下のような計画が可能。さほど無理をしなくても、年収分を貯められる。
年収600万円なら
 40〜52歳(13年) 年収の 2%    年12万円
 53〜54歳( 2年) 年収の 6%    年36万円
 55〜59歳( 5年) 年収の13%    年78万円
          合計   103%  計 618万円  

●子どもが遅く生まれたケースは、早めに準備を
ただし、末の子どもが38歳以降に生まれたケースでは、子の大学卒業が退職と同時かそれ以降となるので、後で積み立てを増やすことができない。この場合は子どもがないケースと同じで、40歳から60歳までフラットに年収の5%を貯める必要がある。教育資金の準備や出費と並行しての積立ては楽ではないが、それでも40歳から始めることで実行可能なプランとなる。

●ポイントは、住宅と60歳〜64歳の収入
という具合に、意外に楽勝という感じの「退職金ありサラリーマン」だが、次の前提を忘れてはいけない。

まず、退職までに「一生住める家賃のかからない家」を確保していること。自分で手に入れた「持家」でもよいし、親から譲り受けた家と土地でもかまわない。買う場合、建てる場合は、住宅ローンは退職までに完済するものとしている。60歳までにローンを返し終えるには、家を買うときに十分な頭金(価格の2割以上)を準備することと、予算内(だいたい年収の5倍まで)の物件を買うことが大切だ。別に持家を勧めているわけではない。退職後も賃貸住まいなら、住宅費分を別途用意する必要があるので、自分で計算して上乗せしてほしい。

もうひとつの前提は、60歳退職でも、公的年金をもらい始める65歳までは、再就職やアルバイトで生活費を稼ぎ、貯蓄を崩さないということだ。もちろん、退職後にクルマや教育ローンが残ってないことも大切だ。

このように退職後資金は、資金だけ、運用方法だけを切り離して考えることはできない。長期のビジョンを持ち、今自分がどこにいるか、今しなければならないことは何かを知って、それを実行することが大切。

さてあなたが退職後のために、今、しなければならないことは、何だろう? 
(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)

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