退職後資金 ― いざ、貯めん!

お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)

退職後資金 ― いざ、貯めん!

●昔はよかった という話
「退職後資金づくりは、長い期間をかけての勝負なので、複利の効果が最も大きく発揮される。利回り3%と7%とをくらべてみると・・・・・」という説明が白々しくしかひびかない今日このごろ。個人国債の利率は「10年国債の基準金利−0.8%」といっていたが、その基準金利がすでに0.7%台。というわけで、個人国債の1回めの利払いは下限の0.05%になるみとおし。金利もかぎりなくナノの世界に入っていきそうだ。

先日、むかし入った生命保険の「個人年金、続けたほうがいいでしょうか」との相談をうけた。計算してびっくり。89年に契約したもので、約250万円の保険料をはらうと、約1000万円の年金がもらえるというもの。これなら予定利率が下がったり、最悪”破綻”ということになっても、500万円はもらえそう。相談の答えは、もちろん「続けましょう」だ。

たしかにそんな時代があったのだ。あのころは、運用のことなど考えずに、退職後資金づくり=個人年金に入ることと考えて、毎月はらえる保険料の範囲で年金に入ればよかった。でも、そんな時代は終わったし、もう2度と来ない。今はこんな夢のような商品はどこにもない。


●だれかに極端に有利な商品は、異常だ
でも、まともな考えかたができる人ならおわかりのように、こんな個人年金は生命保険会社にとっては負の財産だ。自分は1%以下でしか運用できないのに、5%以上の金利をはらわなくてはいけないのだから。つまり、加入者にとってはかぎりなく有利だけれど、これは正常な金融商品ではない(売るほうがおかしいのだが)。3年ほど前に話題になった10年で1.6倍になった郵便局の定額貯金。これも利息は、もとを正せば税金からはらわれたようなもので、正常な商品ではない(だれも痛みを感じないところがまた恐い)。

運よくこんな財産を持っている人は、大切に持ちつづければいいけれど、持っていなくても、くさることはない。正常なもので、正常に退職後の資金をつくることにとりくもう。お金で失敗しない大切なルールのひとつは『他人をうらやましがらない、ねたまない』だ。

●今は、確実に元金をつくろう
今の日本の前代未聞のデフレ。これは、退職後にむけたお金の大半を、元本保証タイプのもので積み立てるべきということだ。年1%のデフレなら、金利が0%でも、インフレ率3%のときに4%で運用できたのと同じになる。今はとにかく、毎月確実に積み立てることこそが最善の策だ。さらにつけ加えるなら、1万円積み立てようかと思うとき、ちょっとガンバッテ1万1000円に、2万円と思うときに2万2000円にすることが、よい結果になる。金融の状況がいつ、どう変わるかわからないので、解約のしにくいものや、解約するとペナルティがあるものは、さけよう。

利率は低くても、確実に貯められるものには、次のようなものがある。

・会社の財形貯蓄
サラリーマンで会社に財形貯蓄制度がある人が利用できる、天引きの貯蓄。「財形年金」は、年金形式でひきだせば、利息に非課税の特典があるが、今の利率ではあまり魅力がない。むしろ、自由にひきだせる「一般財形」でためておき、状況をみて、ほかの商品にのりかえるのがよさそうだ。

・銀行の自動積立て定期
給与振込みの銀行から、毎月一定額を定期預金に振りかえてくれる。定期預金も普通預金も、金利に大差はないが、分けておくことで、つい使ってしまうリスクをなくすことができる。

・証券会社のMMF
もともと長期の積立てに向いているのは公社債投信だが、これは金利の上昇時に元本割れのリスクがあるとされる。なので、値下がりリスクが低く、引き出しやすいMMFでの積立てを。

これらで積み立てていくと、長期の資産づくりでいちばん恐い「目減り」のリスクは当分ない。当分のあいだだけだけれど。「インフレが来るぞ」といっている人たちは、今はみな狼少年あつかいされているが、いつ、なんどき、何が、どうなるか、予測するのは不可能。上記の商品でためていれば、状況が変わったときにお金を動かすことができる。

「急いで得た富は減る、少しずつたくわえる者はそれを増すことができる。」と旧約聖書の「箴言(しんげん)」にある。当時の世界で最大の富を持っていたとされるソロモン王のことばなので、説得力がある。さあデフレにくさらずに、少しずつ蓄えよう。

次回は、この時代の利殖型の投資について、あえてふれてみたい。

(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)

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