シングルのマネープラン(7)

お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)

シングルのマネープラン(7)

住まいを買うか、買わないか

 シングルの悩ましいところは、いつ頃、どんな人と結婚するかを、自分だけでは決められないというところだ。
「絶対に結婚しない」という決心は、ひとりでもすることができるか、逆は不可。そのため「結婚したいけど、できないかもしれない」という不安を多くの人たちが持つことになる。
 その不安を強く感じる人たちがとる行動で、典型的なのが「住まいを買う」「個人年金を契約する」の2つ。
 今回は、シングルで住まいを買うことを考えてみよう

○ 早すぎる購入は危険

 まず、警鐘をならしておくが、住まいを早く買うのは危険だ。早くというのは「40歳になる前に」ということだ。
 実際、20代の後半や30代前半でマンションを買う人はめずらしくない。そのほとんどが女性だ。
 ずっと結婚しないかもしれない → 終のすみかが心配 → 一刻も早く家を買っておこう → 家を買ったら安定感も得られるかもしれない という考えだろう。
 日本の賃貸住宅事情はお粗末で、シングルの大人が満足できるような物件は少ないので、クオリティの高い住環境を求めると、賃貸では難しいという現実も確かにある。
 それでも、40歳前の住まい購入はすすめない。

<理由1> 20代・30代はまだ仕事・働き方・ライフスタイルがどんどん変わる。その時期に家を買って住む場所を固定し、高額の住宅ローンを借りてしまうと、変えたい・変わりたいのに、変えられなくなる危険がある。シングルなのに、思ったように自由に生きられないのは、苦しい。
 ライフスタイルの変化には「結婚」も含まれる。シングルに理想的な物件と夫婦・ファミリー向けの物件はかなり条件が違ってくる。その時に、売るにも貸すにも、今の不動産状況では、かなりの(場合によっては1000万円を超える)損を覚悟する必要がある。

<理由2> 20代・30代ではまだ十分な頭金が貯まってない場合が多い。家は何千万円もする超高価な買い物で、年収の何倍ものローンを借りるのだから、慎重な資金計画は欠かせない。最低でも物件価格の2割の頭金と、約5%の諸費用分は現預金で準備したい。ところが、実際にシングルで家を買った人の資金プランを見ると頭金10%以下という無謀なケースもめずらしくない。 頭金が少ないとその分ローンの借り入れが増え、毎月・ボーナスの返済額が膨らむことに。または退職後も5年、10年とローンを返しつづけることに。 こういう無茶なプランだと、かえって、老後の資金繰りは苦しくなってしまう。

<理由3> 20代・30代では不動産を見る目に不安がのこる。不動産を買う場合は、自分の希望に合っているかだけでなく、その市場価値を客観的に判断しなければいけないが、”住”経験や社会経験が浅いと、営業マンのおいしいセールストークを真に受け、のせられてしまう危険がある。不動産会社の営業マンから、シングル女性にはマンションを売りやすいという声を聞いた。 不動産業界で仕事をしていたシングル女性が、20代で中途半端なマンションを買った例を知っている。彼女はその後結婚し、そのマンションの処分には苦労していた。

○ それでも40歳前に買っていい人

 上の3つの理由を、全部否定できるなら、40歳以前に買ってもいい。1)仕事やライフスタイルが、これからずっと変わらないという自信と確信を持っている。万一変わった場合でも、1000万円やそこらの損では痛くも痒くもない。
2)物件の2割以上の頭金を準備でき、退職以前にローン返済が終了する返済計画を実行できる。
3)自分や家族、友人が不動産のプロであり、売却しても賃貸に出しても、十分元が取れる物件を選ぶことができる。

 不動産は買いたいけど、3つの条件を満たしていないという30代以下の人は、今は将来のために頭金を貯めればいい。今買うなとは言っているが、ずっと買うなと言っているわけではない。
 マンションの寿命は40年〜50年と言われる。20代で買うと60歳くらいで、ボロボロということにもなりかねない。しっかり頭金を貯め(年収の2倍以上)、収入レベルをあげ、不動産を見る眼を磨くのが、40歳までにやるべきことだ。
「今買わないと金利が上がるかも」「不動産が値上がりするかも」と心配することはない。よい物件を選ぶ力、きちんとした資金計画、確立したライフスタイルを手に入れれば、後悔のない買い物ができるはずだ。
(ファイナンシャル・プランナー 中村芳子)

マネックスからのご留意事項

「10年後に笑う!マネープラン入門」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧