お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
<あなたは何がしたいですか>
最近、多くのカウンセリング経験のある心理学者の方と話す機会があった。彼はこれまで、問題を持っている多くの人に会ってきてるわけだが、お金のコンサルティングをしている私と、ある点で意見が一致した。
問題を持っている人、というより、多くの日本人が「恐れ」から行動しているということだ。恐れを「不安」と言いかえてもいい。
ひとつ例をあげると、親が「失敗」を恐れているので、子どもに失敗がない人生を望み,そのために小学校や中学校から
いい私立に入れるよう、小さい頃から受験勉強を強いる。親は「子にいい人生を送ってもらうため」愛情でやっているつもりだが、実は親自身の恐れや不安が、そういう行動をとらせる原動力となっている、というのだ。
親の恐れは子にも感染し、子も失敗を恐れるようになってしまう、らしい。 そうすると、自分がやりたいこと好きなことのために、進路や何をするかを決めるのではなく、不安や恐れから逃げるために行動する癖がついてしまう。そうしていると、だんだん自分が本当は何をしたいのか、何を望んでいるのか、何が好きなのか、あるいは何が嫌いなのか、何をしたくないのかがわからなくなってしまう。心あたり、ない?
FPとしてコンサルティングをしていても、お金に関する意思決定の動機が、不安に根ざしているなあと感じることは多々ある。
たとえば「私は自然が十分ある環境で大型犬と暮らしたいから、郊外に小さい一戸建てを買いたい」「うちは共働きだから、家族一緒の時間をつくるために通勤時間の短い都心のマンションに住みたい」という動機で、自分の気に入った家を探し、それに沿ってマネープランをつくるならけっこうだ。
でも「老後が心配だから、終(つい)の棲家(すみか)として今のうちにマンションを買っておきたい」とあせる20代の女性、「将来の年金はあてにならないから、子どもは持たず共働きで現役のうちにできる限りお金を貯めたい」とがむしゃらに働いている30代男性は、とにかく不安を解消するために行動しているように見える。
相続でまとまった額の金融資産を持っている30代の方が運用の相談に来られたとき、「何がしたいですか」と質問したが、その人は答えられなかった。でも人ごとではない。あなたが今1億円持っていたらどうだろう。そのお金で何をしたいですか(家を買う、住宅ローンを返すという答えは除く)。
お金の面の不安は、現実(収入、貯蓄、今の年金制度など)を直視して、実現可能なプランをつくり実行することで、ある程度解消できる。自分ひとりで考えていると得体の知れないように感じる不安でも、FPなどの専門家に相談すれば、現実的な解決プランを作ってくれるはずだ。
でも、ただ不安を解消するためだけのマネープランは、その人の人生を豊かで楽しいものにはしてくれない。そういう人は、ひとつの不安が解決しても次の不安、その次の不安と見つけてくる傾向がある。
将来のために貯蓄すること、投資すること、キャリアアップをすること。外から見たら同じ行動でも、それが「不安から逃げるため」なのか「やりたいことを実現するためなのか」で、その行動はまったく違うパワーを持つのではないだろうか。
以前このコーナーで「これから10年間で実現したいことを書き出してみよう」と提案した。書き出した人はその項目を、まだの人は書き出してみて、チェックしてみてほしい。
それは、あなた自身が心からやりたいと望んでいることですか。それとも「不安から逃げるために」やらなくちゃと感じていることですか。そもそもあなたの「恐れ」の正体は何なんだろうか。
それがはっきりわかったら、収入や貯蓄が増えなくても、「人生の満足度、幸福度」をアップさせることが可能になるんじゃないか、と真剣に思うこのごろだ。
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