お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
<お金と時間の関係(1)>
拙著「20代のいま、やっておくべきお金のこと」を読んでくれた25歳のKさんから「時間についても教えてほしい」と要望があった。彼はIT系の仕事をしていて平均睡眠時間4時間、起きている時間はほとんど仕事をしているという。おかげでお金を使う暇はない。かかるのは家賃と光熱費の基本料金、コンビニで買う弁当と飲み物代、ケータイ電話代くらいなので、給料の半分がどんどん貯まっているという。ふ〜ん。
お金と時間にはいろんな法則があると思うが、思いつくままにあげてみる。
1)複利の法則・・・・時間をかけると大きく増える
利息が利息をうむ複利タイプの金融商品、あるいは分配金等が再投資されるしくみの金融商品は、長期で運用するほど大きな成果が得られる。100万円を5%複利で運用すると(投資信託などを取り入れると十分可能だ)5年で127万円、10年で162万円、20年で265万円、30年で432万円となる。
25歳で100万円をなんとなく使ってしまえば何も残らない。普通預金に預けていても利息はつかない。しかし年5%の運用を実現させれば、それは30年後の55歳には432万円に増える。ここに毎年の積み立てを組み合わせると大きくパワーアップする。今のちょっとのがまん(無駄遣いをしないで貯蓄に回すこと)、ちょっとの工夫が将来の大きな果実を産むというわけだ。
2)時間とお金の相互補完関係
だれもが体験していると思うが、時間とお金は相互補完関係にある場合がある。たとえば、おいしい料理を食べたいとき、高級レストランに行けば2人で2万円かかるところ、自分で材料を買って料理すれば、5000円以内ですむ。買い物と料理と片付けの時間が1万5000円分の価値を生んだわけだ。
共働きで忙しい夫婦は外食が多くなりがちだ。夕食を全部自宅ですませれば月5万円の食費ですむところ、外食代がかさむと10万円を超えることもあるだろう。買い物と料理と片付けの時間を、月5万円で買ったことになる。
自営業やフリーランス、派遣社員の人なら「時間を売ってお金をとる」か「時間をつくるためお金(収入)をあきらめる」かという選択をしょっちゅう迫られる。サラリーマンの残業もこれに近いかな。「お金で時間を買う」か「時間をかけることで支出を減らす」か、人生でたびたびぶつかる問題だ。 今から意識して、合理的な判断ができるよう訓練しておこう。
3)お金で補えない時間
「時間を売ってお金をとる」というのは、実は簡単。だれでも普通にやっていることだからね。難しいのは「お金をあきらめて時間をつくる」方。すごくすごくすごく難しい。ちょっと株の損切りに似ているが、もっと難しい。大きな勇気がいる一方で、まわりから変な目で見られたりする。単なるナマケモノ、わがままだと思われることもある。
言うまでもなく「時間」にはお金で買えない面がある。どんなに忙しくても、平日の1日と週末の1日を恋人のために空ける。どんなに疲れていても、1日15分は子どもと向き合ってコミュニケーションをする。恋人や家族のために「時間」をつくる代わりに、その時間で稼いだお金で高価なプレゼントを贈っても、意味はない。たぶんまったくムダだ。
4)お金は貯められるが、時間は貯められない
お金のいちばんすごい点は「貯められる」ことだろう。20代で稼いだ分を、貯めておけば60代で使えるというのは、すごいことだ。
ところが時間はこうはいかない。冷凍できない生ものと同じだ。たとえば、睡眠時間や人づきあい、趣味の時間を削って人の 1.5倍はたらき、老後に必要十分なお金を貯めて50歳で退職したとしよう。OK。でも50歳では20代のような恋はできない。20代と同じようには胸をときめかせて映画を観たりできない。将来のために勉強しようと思ったり、世界中を貧乏旅行したいという気にもならないだろう。
仕事ばかりしていたために友達も家族もいなければ、50歳でお金と時間と両方を手にしても、何の楽しみも見つけられないかもしれない。自分の健康づくりにあてるべき時間まで仕事にまわしていたら、体もぼろぼろかもしれない。
子のいる親なら実感していると思うが、日々成長する子どもと過ごす時間は、昨日の分を今日取り戻すことさえ難しい。ましてや年単位では望みがない。特に男性は心してほしい。
5)お金も時間も練習しないとうまく使えない
お金を上手に使ったり、貯めたり、投資したりできるようになるには練習がいる。人から教えてもらい自分で勉強し、実際にやってみて何度か失敗して、自分にぴったりの方法が身につくわけだ。時間も同じ、練習が必要。時間の使い方の上手な人を見習ったり、時間管理の本を読んで実行してみる。失敗しながら自分にぴったりの方法を見つけていくことが必要だ。
だからKさん。残業代が減っても悪口を言われても、自分の今の時間を手に入れる勇気を持ってください。恋をする時間、体を鍛える時間、勉強する時間、ぼーっとする時間、旅行する時間を持ってください。これは、実は「時間」の投資でもある。
この「時間」と投資の関係については、次回考えてみよう。
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