20代からの差をつけるマネープラン(29)

お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)

20代からの差をつけるマネープラン(29)

<親の家を出ることの損得>

 晩婚、非婚があたりまえになっている今、学校を卒業して就職してもそのままず〜っと親の家に住み続ける人は多い。これはお金の面から考えると一見理想的だ。

 手取りの給料が月20万円だとしよう。形ばかりの家賃として家に「3万円」入れ、月3万円貯金したとしても、残り14万円はまるまる自分の小遣いになる。40代サラリーマンの小遣いが月4〜5万円といわれていることを考えると、王子様王女様のような生活ができる。
 ブランドの服、靴、バッグ、最新のパソコンやAV機器、毎年海外リゾートへ、話題のレストラン探索、国内の有名老舗旅館へ、エステにスポーツクラブetc.それでいて、洗濯や部屋の掃除、食事作りや片付けはしなくてすむ(親がやってくれる)。

 でも、これは果たしていいことだろうか。実はいくつか問題が潜んでいる。この生活では成人して就職しても「自分で稼いだ金で生活する」経験をしていないことになる。これは後々、困ったことになる可能性がある。

 自宅通勤のこの人が、恋をして、結婚したくなったとする。相手の給料も月20万円だとして、計算してみよう。
 2人の収入を合わせて40万円。ここから家賃12万円を払うと残り28万円。そこから光熱費2万円、通信費2万円、食費5万円、雑費3万円、貯蓄4万円を引くと12万円。自由に使えるお金は6万円ずつになる。自由になるお金が月8万円、年約100万円減ることに。

 自由になるお金が月14万円→6万円に減り、自分の時間が減るのに、自宅を出て結婚する勇気を出せるだろうか。微妙なところだ。

 上の例は結婚しても共働きを続けた場合、つまり経済的には楽なケースだ。これが結婚後しばらくして、妊娠を機に妻が仕事を辞める場合を考えてみよう。現実に、結婚退職や妊娠退職を夢見ている女性はとても多い。
 夫の手取り収入が月35万円にアップしていたとしよう。ここから上記の家賃〜雑費までの24万円、妻の小遣い2万円、子どもの費用2万円、将来のための貯蓄4万円を引くと、夫が自分で使えるお金はわずか3万円となる。
 独身時代は自由になるお金15万円だったのが、男は月3万円、女は月2万円になるわけだ。

 それでも自宅を出て結婚し、子どもを持つ決心をすることができるだろうか。それだけの勇気を出して決断をするのは、男性にとっても女性にとってもかなり難しい。
(ここで専業主婦願望の独身女性へ一言。あなたが望む生活レベルを維持してくれる高収入の男性は、この世にほんの一握りしか存在しません。親の世代は中流であれば専業主婦の生活ができたけれど、今の20代の世代で優雅な専業主婦生活ができるのは上流クラスだけ。現実を認識しよう)

 では手取り収入20万円のときに、家を出て自活したらどうだろう。家賃8万円、光熱費1万円、通信費1万円、食費3万円、雑費2万円、貯金2万円として自分の自由になるお金は3万円だ。苦しい。これで外食代や洋服代、化粧品代、交際費全部を賄わなくてはいけない。不可能に思える。最初は赤字で貯金をくずすことになるかもしれない。でも少しずつ上手な「節約」や「買い物」、満足度の高いお金の使い方が身についてくる。給料が上がってくれば、なんとかやっていけるようになるはずだ。つまり、親の家を出ることも、自分の自立能力を高めるための「投資」なのだ。

 この人が、恋をして結婚したいと思ったらどうだろう。
 結婚すると、月8万円のワンルームから月12万円の2DKにランクアップ。自由に使えるお金も月3万円から6万円にアップする。愛する人と一緒に暮らせるだけでなく、生活もグレードアップすることに。だったら、結婚する勇気は・・。

 計算上は親の家を出ず、その間できるだけお金を貯めるのが合理的だ。だが、結婚するのに十分な貯蓄ができても、結婚するアクションには結びつきにくい。親は年をとる。自分も年をとる。年をとるほど、生活のランクを下げるのも、ライフスタイルを変えるのも難しくなる。

 親の家を出るにはお金がかかる。独立すると生活は苦しくなり、遊べなくなり、お金も貯めにくくなる。でもその成果として精神的な独立、健全なお金の使い方、やりくりの仕方が身につけば十分に元はとれる、と考えられないか。それに、やっぱり結婚しやすくなると思うんだけどなあ、どうだろう。結婚しなくても、親から物理的、精神的、経済的に離れるのは、ひとりの人間として生きていくために大切だと考える。

 とはいえ、家を出るには一定以上の収入、引越し代などのための多少の貯蓄が必要だ。そのために卒業後数年、親の家に住むのはいたし方ない。しかし期限は3年だ。大目に見ても5年だろう。それを過ぎるとおっくうになる。22歳で大学を卒業したら25歳まで、遅くても28歳までには家を出て自活しよう。期限と目標を定めれば、その間にしっかり貯蓄もできるはずである。

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